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公開:2025.05.24 最終更新:2025.05.28

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人と組織の学問、組織行動論とは?組織運営に応用する方法まで解説

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「なぜあの人はあんな行動をしたのだろう?」と思うことはありませんか?

楽しそうに働いているように見えたのになぜ退職してしまったのだろう、あのマネージャーは頑張っているのになぜ結果が出ないのだろう、逆にあのマネージャーはあまり動いているように見えないのになぜいいチームを作れているのだろうか。

組織における人の行動は複雑です。自分の経験だけから考えていると理解できない部分、予想が外れる部分が出てきます。そこで役立つのが組織行動論です。

この記事では、組織行動論とはそもそも何か、何に活きるのか、どう学べばよいかを解説します。

組織行動論について

組織行動論とは

組織行動論とは、組織の中の人の行動を研究する学問です。経営学の一分野にあたります。

哲学や数学のように純粋な学問というよりも「まぜこぜ」な分野です。心理学や社会学、経済学、人類学など、様々な学問を組み合わせて人と組織を見ようとしているのが組織行動論です。

組織行動論が発展した背景

組織行動論は、産業革命で工場労働が増えたことをきっかけに発展しました。最初は作業の効率を上げるために、働き方を細かく分析して管理する方法が考えられましたが、働く人の気持ちや人間関係はあまり重視されていませんでした。

転機になったのがホーソン実験です。この実験では、働く人が注目されたり、仲間と良い関係を築いたりすると、モチベーションや生産性が高まることがわかりました。そこから人はどんな時にモチベーションが高まるかや、リーダーシップのあり方についての研究が進みました。

時代が進むにつれて、組織は外部の環境に合わせて柔軟に変わる必要があることも明らかになりました。今では、グローバル化やITの発展に伴い、チームワークや職場の雰囲気づくりも重要視されています。

企業において組織行動論を学ぶ意味

では組織行動論を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか?

組織行動論の第一人者、服部泰宏さんによる答えがこちら。後ほど紹介する『組織行動論の考え方・使い方』前書きを筆者がまとめたものです。

実務家の持つ、自身の経験に基づいた人間への理解を鍛え上げるのに役立つから。

他者の行動を不可解に思う時、不可解だと判断した根拠は自分の経験であることが多いのではないでしょうか。「こうしたらいいと(自分の経験からは)思うのに、なぜあんなことをしたのだろう」というように、実は判断の前提が自分の経験になっていないでしょうか。

心理学や社会学、そしてそれらを活かした組織行動論を学ぶことで、「組織の中でこんな場合には人はこんな行動を取る」という自分なりの「人間理論」を鍛え上げることができます。

組織行動論を学ぶことで、現実の課題に対処するために必要な人を見る力を鍛えることができます。組織行動論は目の前の課題にすぐ効く処方薬というよりは、いわば自分なりの薬を調合するのに役立つ分野ではないでしょうか。

組織行動論のテーマ

組織行動論が対象とする範囲は広いです。以下に一例を挙げます。

  • モチベーションと報酬
  • リーダーシップ
  • 意思決定
  • 組織の中の公正さ
  • 組織に適応していくプロセス(組織社会化)
  • エンゲージメント(組織コミットメント、ワークエンゲージメント)

企業組織の中での人の行動は幅広く研究されています。

組織行動論に影響を与えた人物

組織行動論の発展に貢献してきた人物をご紹介します。

「効率的な作業管理と生産性向上のための科学的管理法」フレデリック・テイラー(1856–1915)

テイラーは、工場作業の効率を最大化するために「科学的管理法」を提唱しました。作業手順や時間を科学的に分析し、最適な作業方法を標準化することで生産性を高めようとしました。適切な人材配置やインセンティブ制度も重要視し、労働の質を数値的に管理するアプローチを確立しました。しかし労働者を機械的に扱う側面は批判され、後の人間関係論の発展につながります。

「人間関係と集団の重要性を明らかにしたホーソン実験」エルトン・メイヨー(1880–1949)

メイヨーはホーソン工場での実験を通じて、作業環境の物理的な条件よりも、人間関係や職場内での社会的つながりが生産性に大きな影響を与えることを発見しました。従業員が自分の仕事を認められたり、仲間と良い関係を築いたりすることが、やる気を引き出す鍵になることを示し、組織行動論における「人間関係論」の基礎を築きました。

「人間の欲求を5段階で説明した欲求階層説」アブラハム・マズロー(1908–1970)

マズローは、人間の欲求を「生理的欲求」から「自己実現欲求」まで5段階に分けて説明する欲求階層説を提唱しました。人は基本的な欲求が満たされると、次に高次の欲求を求めるという考え方は、組織内でのモチベーション向上の施策に影響を与えました。特に働きがいや成長の機会が従業員のやる気を高める要因になることが示され、組織行動論に取り入れられました。

「人間観を転換したX理論・Y理論」ダグラス・マグレガー(1906–1964)

マグレガーは、管理者が労働者をどのように認識するかによって組織の成果が変わると述べ、X理論・Y理論を提唱しました。X理論では人を「怠惰で命令が必要」と見なし、Y理論では「主体的で創造的」と捉えました。マグレガーは、人間を前向きに捉え、信頼することで自発的な働きが促されると主張し、組織の管理スタイルに大きな影響を与えました。

「組織を環境に適応する開かれたシステムとして捉えた」ダニエル・カッツ(1903-1998)&ロバート・カーン(1918-2019)

カッツとカーンは、組織を外部環境と相互に影響を与え合う「開かれたシステム」として捉える理論を展開しました。外部環境の変化に適応するためには、組織内の役割やプロセスを柔軟に調整する必要があると説きました。彼らの理論は、グローバル化や技術革新が進む現代において、組織の持続的成長を支える考え方として発展しています。

組織行動論を組織運営に応用する

組織行動論を実際の組織運営で使うにはどうしたらよいでしょうか。以下にいくつかの案をあげます。

新しく入社した人に定着してもらうには

会社のようなある組織の構成員として加わると、やがてその組織ならではのルールを知り、組織に適合していきます。このプロセスに関する1つの研究が「組織社会化」です。

組織社会化とは「個人が組織内の役割を引き受けるのに必要な知識や技術を獲得するプロセス」と定義されます。会社で言えば、新入社員なりの役割を果たすための仕事の仕方、スキル、知識などを身に付けていく過程のことです。

組織社会化は以下のように集団、組織、個人の順に進むと言われています。

  • 職場で良好な人間関係を構築する
  • 組織の規範を受け入れる
  • 組織人としての態度や価値観を獲得する

つまり個人の価値観を変えるには時間がかかります。新しく入社してきた社員にはいきなり価値観の転換を迫るのではなく、まず人間関係を作ることや、組織のルールを理解することを優先するとよいでしょう。

モチベーションを高く保つには

モチベーションについては非常に多くの研究があります。

組織行動論では「目標に向けて行動を方向付け、活性化し、維持する心理的プロセス」として仕事モチベーションという概念を定義しています。

モチベーションに関する話題としてよく登場するのが、マズローの欲求階層説や、モチベーションを2つに分類する2要因説です。2要因説とは、「その要因が高いことで仕事の満足に繋がるプラスの要因」動機づけ要因と、「その要因が低いと不満足に繋がる要因」衛生要因に分ける説です。例えばやりがいを感じられる仕事内容は動機づけ要因、労働環境は衛生要因になるでしょう。

マズローの欲求階層説

ただ、これらはいずれも研究では実証されていません。

そこで今回は「内発的動機づけ」「外発的動機づけ」を紹介します。

人が何かをする時、金銭や物質の報酬や、他者に承認されるなど社会的な報酬が無くとも、それ自体の面白さ、興味深さをモチベーションとしている時があります。趣味の多くはそうでしょうし、仕事においてもその面白さで取り組むことがあるでしょう。

このように、その行為自体に動機づけられることを「内発的動機づけ」と呼びます。逆に報酬や罰など、何らかの外的な要因で動機づけられることを「外発的動機づけ」と呼びます。内発的動機づけは外発的動機づけに比べて効果が持続しやすいことが知られています。

内発的動機づけ、外発的動機づけにおいては「アンダーマイニング効果」という現象が報告されています。これは、「面白いから頑張る」という内発的動機づけで行動していた所に報酬が与えられると、その行為自体への興味が減ってしまうという現象です。つまり外発的動機づけによって内発的動機づけが失せてしまいます。子どもが計算ドリルを楽しく解いていた所に、ドリルを終えたら欲しかったおもちゃを買ってあげると親に言われ、逆にやる気が失せるような状態です。

このアンダーマイニング効果には、「自分の行動の原因は自分でありたい」という人間の欲求が関係しているとされています。純粋な興味で取り組んでいたのに、報酬が与えられることで自身の行動が他者にコントロールされていると感じ、自己決定感が脅かされた結果、興味が失せると考えられています。

ただ報酬が必ずモチベーションにネガティブな影響を与えるとは限らないとも言われています。実際、例えば会社員として報酬を貰っていてもモチベーション高く仕事に取り組んでいる人が存在することは、多くの人が経験として知っているのではないでしょうか。

関連する研究である自己決定理論によれば、外的報酬には2つの機能があります。

  • 人を動機づけ、コントロールする機能
  • その人が有能であることを当人に伝える機能

このうち後者の側面が前者よりも明確である場合、アンダーマイニング効果が大幅に減少することが分かっています。

また、外的報酬が以下のように与えられる場合、むしろ活動そのものの楽しさややりがいを増幅させる効果があることが分かっています。

  • 何かを達成したことの承認として与えられる(例えば「あなたが見事にこの仕事を成し遂げたからこそ、この報酬を与えています」)
  • 有能感の確認として与えられる(例えば「あなたは優秀なので、その証として報酬を与えます」)

企業において仕事の報酬として給与を与えないことはないでしょう。金銭的な給与やインセンティブは外的報酬にあたりますので、渡す際のコミュニケーションが悪いと本人の内発的動機づけを削ぐ可能性があります。しかし報酬を渡す際のメッセージを工夫することで、モチベーションを高めてもらえる可能性があることが分かります。

エンゲージメントを高め、仕事にポジティブな心理状態になってもらう

エンゲージメントは近年注目されている概念です。様々な定義がされていますが、専門的には2つに分けることができます。

1つは個人と組織の結びつきが良好なことを指す「組織コミットメント」、もう1つは個人と仕事の結びつきが良好なことを指す「ワークエンゲージメント」です。こちらではワークエンゲージメントについて解説します。

ワークエンゲージメントは「仕事に対する全体的で持続的なポジティブで充実した心理状態」を指します。「全体的で持続的な」というのは、例えば「○○プロジェクトで成功した」のような特定の出来事によって起こった一時的な心理状態ではないということです。ある程度の期間、仕事全体に対して熱意を持ち、活力を持って没頭しているような状態です。

研究においては、ワークエンゲージメントが高いと以下の影響があると言われています。

  • 組織コミットメント(ざっくり言えば「組織に貢献したい」という気持ち)が向上する
  • パフォーマンスが向上する
  • 離職意思が抑制される

ただ同時に、残業時間が長くなる、組織のための役割外の行動が増えることで家庭の時間が減り仕事と家庭間の葛藤が生まれる、といったことも起こりえます。ワークエンゲージメントが高い場合、本人としては充実して働いている可能性が高いですが、注意は必要です。

このワークエンゲージメントに繋がると言われている要素として、例えば以下があります。

  • 上司・部下のサポート
  • 仕事の裁量権
  • コーチング
  • 自己効力感(ざっくり言えば「自分は○○をうまくできる」という自信)
  • 組織内自尊心(ざっくり言えば「自分は組織において価値ある存在である」と思うこと)
  • 楽観性

従業員には自身の仕事にポジティブな気持ちで取り組んでもらいたいと考えている場合は、ワークエンゲージメントの研究を参考にすることができます。

従業員みずから会社を良くする行動をしてもらう

みなさんの周りに職場でごみを見つけたら拾う方はいますか?自分自身の仕事ではないのに、助けを求めると応えてくれる方はいますでしょうか。

こういった役割外の行動を組織市民行動と呼びます。厳密には「職務上の要求ではなく、公式的な報酬制度でも認められない、組織の有効性に対する個人の貢献」と定義されます。

組織市民行動が増えることで、以下のようなメリットがあると研究されています。

  • 組織全体の業績が向上する
  • 離職意思や欠勤率を抑える
  • 職務満足(仕事や会社に対する満足度)に繋がる

組織市民行動と上司の関係も研究されています。

組織市民行動を増やす上司の特徴は、

  • 部下にこまめに助言する
  • 部下から信頼を得ている
  • 経営者のビジョンを認知させる行動を取る

逆に組織市民行動を抑制する上司の特徴は、

  • 好き嫌いで賞罰を与える
  • 職場をよく歩き回り、つねに部下のことをチェックする

と言われています。

ただ、組織市民行動は増えれば増えるほどいいとは限りません。組織市民行動には負の側面もあります。

  • 印象管理と似ている部分がある
  • 労働時間が長くなり、仕事と家庭・余暇との軋轢が生まれる
  • 組織市民行動を強制するような圧力が生まれる
  • 有限な時間を組織市民行動に使ってしまい、本来の業務にかける時間が減る

そのため、そもそも現状の組織において組織市民行動が増えるべきなのかどうかを判断する必要があるでしょう。

リーダーシップを発揮する

リーダーシップの研究は非常に多くなされています。ただ一方でそれら大量の研究の関係性が必ずしも整理されている訳ではありません。「最も研究され、しかし最も謎多き領域」と言われることもあります。

ここでは「強い力を持ってメンバーを引っ張っていく」ような、よく想像されるリーダーとは離れたリーダーシップの概念をいくつか紹介します。

サーバント・リーダーシップ

サーバント(servant)とは召使いを意味します。サーバント・リーダーシップとは、「よきリーダーは本質的には人々を下から支える存在である」という考えに基づいた概念です。

サーバント・リーダーの10個の属性として、NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会では

  • 傾聴(Listening)
  • 共感(Empathy)
  • 癒し(Healing)
  • 気づき(Awareness)
  • 説得(Persuasion)
  • 概念化(Conceptualization)
  • 先見力、予見力(Foresight)
  • 執事役(Stewardship)
  • 人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
  • コミュニティづくり(Building community)

を挙げています。

スピアーズによるサーバントリーダーの属性 – 日本サーバント・リーダーシップ協会

リーダーだからと言って、必ずしもメンバーを引っ張らなければならないとも限らないことが分かります。

LMX

リーダー・メンバー・エクスチェンジ(LMX)は、リーダーとメンバーの心理的な交換・契約関係のことを指します。

LMX以前のリーダーシップ研究では、リーダー固有の特性は部下全員に同じ影響を与えるという仮定がありました。つまり「あるリーダーは部下全員に対して同じように振舞うし、同じような関係性を築く」と考えていた訳です。しかし実際の場面では、リーダーの振る舞いは相対するメンバーごとに異なる部分もあるのではないでしょうか。リーダーとメンバーの関係性であれば、同じリーダーであってもメンバーによって違うのが普通でしょう。

LMX理論では、リーダーとメンバーが関わり合いの中で心理的な交換・契約関係を築くとみなします。例えば以下のような流れです。

  • リーダーが部下に仕事を与える
  • メンバーがリーダーの期待以上の成果をあげる
  • リーダーはメンバーを高く評価し、適切な報酬を与える
  • メンバーはリーダーの高評価に報いようと、熱心に働くようになる

これはリーダーとメンバーの間で心理的な交換・契約関係が好循環しているパターンです。逆に、

  • リーダーが部下に仕事を与える
  • メンバーがリーダーの期待を下回る成果を上げる
  • リーダーはメンバーを低く評価する
  • メンバーはリーダーから心理的に距離を取り、懸命に働く意欲が失せる

こちらは関係が悪循環しているパターンです。

そして組織の中では関係が好循環している「質の高い交換関係」のグループと、悪循環している「質の低い交換関係」のグループが出来上がります。

ところで、この「質の高い交換関係」に近しい日常的な概念があります。「ひいき」です。

詳細は省きますが、LMX理論ではリーダーがメンバー全員をひいきする、つまりメンバー全員と質の高い交換関係を築くことが可能であると言われています。質の高い交換関係を築けると業務パフォーマンスが向上する、離職率が低下するなどのメリットがあるため、ベストな状態と言えるでしょう。

シェアード・リーダーシップ

ところで、リーダーの役割は本当に1人が背負わねばならないのでしょうか?

「メンバー間でリーダーシップの影響力が配分されているチーム状態」を指すシェアード・リーダーシップに関する研究も存在します。

例えば、あるグループのリーダーはプロジェクトやタスクの管理が得意、副リーダーはメンバーの気持ちに配慮してメンバーのモチベーションを高めるのが得意だとします。この場合、リーダーが自分自身でメンバーの感情のケアまで全てをこなそうとせずとも、感情配慮が得意な副リーダーに補ってもらえばよいのではないでしょうか。もちろんリーダーと副リーダーの得意不得意が逆であっても同じ話です。

このように組織行動論を学ぶことで、実際の組織課題への示唆を得ることができます。

いずれもこの記事の中では説明しきれない概念です。それぞれに記事や本、論文もありますので、興味を持たれた方はぜひ調べてみてください。

組織行動論のおすすめ本

ここでは個別のトピックに特化した本ではなく、組織行動論のトピックを広く学べる本を紹介します。入門の3冊、本格的な1冊、番外編1冊を挙げています。

『組織行動論の考え方、使い方』服部泰宏

組織行動論の考え方・使い方〔第2版〕: 良質のエビデンスを手にするために – Amazon

組織行動論の研究者が、組織行動論を初めて学ぶ人向けに書いた本です。キャラクター同士の会話や具体例を挟みつつ、易しく解説されています。組織行動論の概要を掴みたい方にお勧めです。

『組織設計概論』波頭亮

組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際 – Amazon

組織をどう作り、どう動かすかを理詰めで考えたい人に向いている本です。少し古いですが実践的で、理論だけでなく現場でどう使うかまで丁寧に書かれています。派手さはないものの、読み込むほど「組織はこう考えるのか」と納得できる、地に足のついた一冊です。

『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ

影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理 – Amazon

なぜ人は「イエス」と言ってしまうのかを、科学的な視点と実体験の両方から探った一冊です。専門書ですが語り口は軽妙で、心理学の原理が日常の中でどう作用するのかがリアルに伝わってきます。自分のだまされやすさをきっかけに研究を始めた著者の正直さが魅力です。読んでみると、人の行動の裏側が少し見えるようになるかもしれません。

『異文化理解力』エリン・メイヤー

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 – Amazon

『異文化理解力』は「なぜ伝わらないのか」「なぜ通じないのか」という異文化間の戸惑いを読み解いていく一冊です。8つの指標による文化の違いのマッピングを通じて自分の常識がいかに相対的かを思い知らされます。異なる文化の中で働く人にとって、誤解を減らし、協働を深める手助けになる本です。

『企業変革力』ジョン・P. コッター

企業変革力 – Amazon

組織変革の失敗を防ぐための「8段階プロセス」を示しています。変革の推進には危機意識の共有やビジョンの浸透、そして短期的な成果の積み重ねが不可欠であることを、理論と事例で丁寧に解説しています。「組織を変える」という抽象的な行為を噛み砕くことのできる本です。

『学習する組織』ピーター・M・センゲ

学習する組織――システム思考で未来を創造する – Amazon

変化に柔軟に対応して進化し続ける組織をどう育てるかに焦点を当てた本です。ピーター・センゲの理論をベースに、日本の現場に根ざした視点で丁寧に展開されていて、理屈よりも「どう実践するか」が具体的に書かれています。肩肘張らずに読めるものの内容は深く、理想論ではなく現場の悩みに刺さる一冊です。

『知識創造企業』野中郁次郎、竹内弘高

知識創造企業(新装版) – Amazon

『知識創造企業』は、単なる「知識の管理」ではなく、「知識を創造する力」に焦点を当てた異色の経営書です。特に注目したいのは、“暗黙知”と“形式知”のダイナミックな変換プロセスを理論化し、日本企業の競争力の源泉を明らかにした点です。

読めば読むほど「知識とは単なる情報ではなく、人の経験や価値観から生まれるエネルギーなんだ」と気づかされる一冊です。理論にとどまらず、現場の実例を通じて「知がどう生まれ、広がるのか」が実感として伝わってきます。経営や組織に関心があるなら、一度は触れておきたい知的な冒険書です。

『ハイフライヤー:次世代リーダーの育成法』モーガン・マッコール

ハイ・フライヤー: 次世代リーダーの育成法 – Amazon

リーダーシップ開発の分野で高く評価されている一冊です。リーダーシップ開発を組織全体の責任と位置づけ、事業戦略と結びつけて考える重要性を強調しています。リーダーシップ育成の豊富な経験をもつ筆者が、リーダーシップは生まれつきの能力ではなく学習可能な能力であるという立場にいることに励まされます。

現在は絶版となっており入手困難ですが、興味がある方はぜひ図書館などで探してみてください。

現代の組織が直面する組織課題とは

現代の組織は多くの課題に直面しています。ここでは5つを取り上げます。

離職率の上昇

最近、多くの会社で「人が辞める」問題が増えています。仕事へのやりがいや成長の機会が足りない、職場の雰囲気が良くない、働き方が合わないなどが原因です。組織行動論では、人は「自分が認められている」「成長できる」と感じると仕事への満足度が高まるとされています。具体的には定期的な面談でのフィードバックや、学びの機会を提供することで、従業員のやる気を引き出し、辞めたい気持ちを減らすことができます。働く人が自分の仕事に意味を感じ、組織に貢献していると実感できる環境づくりが大切です。

部門間の連携不足

会社の中には、営業・製造・開発などさまざまな部門があり、それぞれが異なる目標を持っています。そのため、部門同士が連携せず情報共有がうまくいかない「サイロ化」が起きることがあります。組織行動論では、共通の目標やビジョンがあれば、人や部門は協力しやすくなるとされています。たとえば、合同のミーティングや共同プロジェクトを設けることで、部門を超えた連携が生まれやすくなります。お互いに「同じゴールを目指している」と感じることが、より良い成果につながります。

マネジメントとリーダーシップの変化

これまでのマネジメントは、上司が部下に指示を出し、業務を管理するスタイルが一般的でした。しかし、現代の組織では、変化の激しい環境に対応するために、従業員の主体性や創造性を引き出すことが求められています。特に、リモートワークの普及により、直接的な監督が難しくなったため、目標を共有し、部下を信頼して仕事を任せる「支援型リーダーシップ」への移行が進んでいます。組織行動論では、信頼関係が強いチームはパフォーマンスが向上しやすいことが指摘されており、これからのリーダーには「育成」と「対話」が重要な役割となっています。

多様性と包括性の管理

グローバル化や働き方の多様化で、職場には異なる文化や価値観を持つ人が増えています。多様な視点は新しいアイデアを生む力になりますが、理解しあえないことによる対立が生まれることもあります。組織行動論では、人は互いに理解し、尊重し合うことで、安心して意見を言えるようになるとされています。例えば多様性をテーマにしたワークショップや、異なる文化を知る機会を設けることで、職場の信頼関係が強まります。「違いを受け入れること」が、組織全体の成長につながります。

リモートワークとハイブリッドワークの定着

リモートワークやハイブリッドワークが広がり、家やカフェで仕事をする人が増えました。しかし、顔を合わせる機会が減ることで、チームの一体感が薄れたり、情報がうまく伝わらなかったりする課題が出ています。組織行動論では、人は「自分が組織の一員だ」と感じると、積極的に仕事に取り組むことが分かっています。オンラインでも定期的に雑談の場を設ける、成果をしっかり認めて感謝を伝えるなどの工夫が、リモートワークでも強いチームづくりにつながります。

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