「採用したいのに、そもそも候補者が集まらない」「あと数名採用したいが、追加費用はなるべくかけたくない」といった悩みは、多くの企業様から問い合わせをいただきます。実は、追加費用が掛からないだけでなく、自社に合った人材を採用しやすい方法があります。それは、辞退/不合格者の応募者リストを掘り起こすことです。
そこには、内定を出したものの辞退した人、選考途中で辞退した人、最終面接まで進んだものの惜しくも不合格となった人など、一度は自社に興味を持ち、自社も時間をかけて向き合った人たちが眠っています。新しい候補者をゼロから探さなくても、こうした「過去に接点を持った人」にもう一度声をかけることで、追加の媒体費や紹介手数料をかけずに母集団を広げられる可能性があります。
「一度断った・断られた相手に連絡する」のは失礼?
とはいえ、採用担当者からすると少し気まずいものです。
「一度辞退されたのに、また連絡していいのだろうか」
「こちらから落としておいて、今さら声をかけたら失礼なのではないか」
と思うかもしれません。
しかし、候補者側は必ずしもそう受け取るわけではありません。TalentXの調査では、過去に接点を持った企業から再度スカウトを受けることについて、86.6%の候補者が好意的に感じると回答しています。また、マイナビの調査では、転職意向がある人の30.7%が「再転職するなら、以前内定を辞退した企業でもう一度応募したい会社がある」と回答しています。
参考:『一度ご縁がなかった会社からのスカウトを9割の人が嬉しいと回答<過去不採用/辞退した会社からのスカウトに対する意識調査>』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000036924.html
『転職ファストパスの可能性と課題~内定辞退者との新たな接点構築に向けて~』https://career-research.mynavi.jp/column/20250818_100053/#i-4
考えてみれば、内定辞退は必ずしも「その会社が嫌だった」という意味ではありません。「第一志望から内定が出た」「希望する職種や勤務地が違った」「当時の条件では他社を選んだ」など、その時点での比較の結果であることも多くあります。実際、マイナビの2026年卒調査でも、企業が把握している内定辞退理由では「より志望度の高い企業から内定が出た」が最も多く、職種・勤務地・給与などの条件も理由として挙げられています。
時間が経てば、候補者の状況も、企業側の状況も変わります。つまり、一度ご縁がなかったからといって、将来もずっと合わないとは限らないのです。
参考:『2026年卒企業新卒内定状況調査』https://career-research.mynavi.jp/reserch/20251107_104128/#i-5
まず声をかけたいのは「惜しかった人」
もちろん、過去応募者なら誰にでも連絡すればよいわけではありません。優先的に見返したいのは、たとえば次のような人です。
- 内定を出したものの他社を選んだ人
- 選考途中で他社決定やタイミングを理由に辞退した人
- 最終面接など選考後半まで進んだ人
- 当時はポジションとの相性で不合格にしたものの、能力や人柄には高い評価がついていた人
- 経験不足が理由だったが、数年の経験によって条件を満たしている可能性がある人
逆に、価値観や仕事への姿勢など、自社との根本的なミスマッチを理由に不合格とした人まで掘り起こす必要はありません。ポイントは、不合格者を「採用できない人」として一括りにしないことです。採用には相対評価があります。
- 「採用枠が1名だったため、より経験のある別候補者を選んだ」
- 「当時募集していたポジションとは合わなかった」
- 「あと少し経験があれば採用したかった」
こうした不合格であれば、環境が変わった今、評価も変わる可能性があります。
「また募集しています」だけではもったいない
再アプローチする際には、単に求人情報を送るのではなく、「なぜ今、あなたに連絡するのか」がわかるようにすることが必要です。
候補者からすれば、一度選考を受けた企業です。そのため、
- 「以前〇〇職の選考でお話しした際、△△の経験が印象に残っていました」
- 「当時は募集ポジションとの兼ね合いでご縁に至りませんでしたが、今回〇〇のポジションを新設することになり、改めてお話ししたいと思いました」
など、なぜ今、自分に連絡してきたのかがわかるだけで受け止め方は大きく変わります。いきなり「応募してください」と求める必要もありません。「転職(就職)活動中でなくても構いませんので、近況も含め一度お話ししませんか」くらいの接点から始める方が、候補者も接触しやすくなります。
今日からできる「過去応募者の掘り起こし」
こうした掘り起しは、大掛かりなタレントプールのシステムを導入しなくても、始められます。ATSや採用管理表から過去1~3年程度の応募者を出し、
- 内定辞退者
- 選考辞退者
- 選考後半の不合格者
の順に見返してみてください。その中から「今募集しているポジションなら、もう一度会いたい」と思える人を数名選び、当時の面接記録を見ながら個別に連絡してみる。まずはそれだけでも十分です。
さらに今後の採用では、辞退や不合格になった際に「再アプローチ候補か」を残しておくと、毎回ゼロから探す必要がなくなります。たとえば、
- 「評価は高かったが採用枠の都合で不合格」
- 「経験があと1~2年あれば再検討」
- 「今回は他社決定による辞退」
- 「将来的な再連絡可」
といった情報を残しておくだけでも、数年後には自社独自の候補者リストになります。
過去応募者の個人情報利用には注意が必要
なお、過去応募者の個人情報を継続して保有・利用する場合は、自社が応募時に示している個人情報の利用目的や保存方針、本人への連絡可否を確認したうえで運用する必要があります。個人情報保護委員会も、本人が自分の情報の利用方法を合理的に予測できる程度に利用目的を具体化することを求めています。掘り起こしは今すぐに始められますが、まずは自社の個人情報保護方針を今一度見直してみることが最優先です。
採用母集団は「新しく集める」だけではない
採用活動を続ければ続けるほど、企業には過去の候補者との接点が蓄積されていきます。ところが多くの場合、辞退や不合格になった瞬間、その候補者は採用活動の対象から外れてしまいます。これは少しもったいない状態です。母集団形成というと、どうしても「新しい人を集める施策」に目が向きます。しかし、自社がこれまで積み重ねてきた採用活動そのものも、立派な母集団です。一度終わったご縁を、もう一度採用の選択肢に戻してみてはいかがでしょうか。
この記事を共有する