近年注目を集めているリファラル採用について、「市場データ」と「心理学」の両面からリファラル採用の効果やメカニズムを解明し、失敗しないための制度設計までを網羅。理論に裏打ちされた、明日から使える具体的な運用ノウハウをお伝えします。
リファラル採用の概要
リファラル採用とは、自社の社員や内定者などを軸として、その周辺の人間関係に目を向け、候補者を紹介してもらい、採用する手法です。新卒採用におけるリクルーター制や研究室訪問なども広義のリファラル採用と言えるでしょう。リファラル採用は、「企業をよく理解した社員」のつながりを通じて行われ、候補者がリアルな情報を得やすいことなどから、採用ミスマッチが起きにくく、マッチング率や定着率が高いのが特徴です。また、求人媒体や人材紹介会社を仲介しないため、みずから求人に応募することのない転職潜在層へのアプローチが可能となる点も特徴的です。
リファラル採用と縁故採用の違い
リファラル採用に類似する言葉に縁故採用があります。どちらも社員からの紹介を受けて採用する点は共通していますが、大きく異なるものです。
縁故採用 (コネ採用) とは、血縁などの関係や特別なコネクションを理由に応募者を採用することを指します。この場合、応募者の資質や企業が求める人材とのマッチングは置き去りにされ、コネクションを持つ人物との関係が優先される側面があります。選考をきちんと行わずに採用されるケースもあり、ネガティブな印象を持つ人も少なくありません。一方、リファラル採用は、コネクションを候補者集団形成の起点として利用しますが、採用試験があるなど、自社の採用基準を満たすことが前提条件となります。
リファラル採用が注目されている背景
リファラル採用が近年注目を集めている背景には、日本の労働市場が抱える複数の課題が影響しています。
人材獲得競争の激化と採用チャネルの多様化
少子高齢化による労働力人口の減少は、日本の大きな社会問題となっています。その結果、ほぼすべての業界で労働者不足を判断する数値が年々増加しており (厚生労働省, 2025) 、採用活動が難航する状況が続いています。

Note. From厚生労働省 (2025). 労働経済動向調査

Note. From 厚生労働省 (2025). 労働経済動向調査
このような人手不足な市場において、企業は広告をうつなど応募を待つ姿勢から、スカウトやダイレクトリクルーティングなど、採用候補者を自ら探しにいく姿勢が求められるようになり、既存の採用手法だけでは優秀な人材の安定的な確保が難しくなっています。
リファラル採用は、既存のチャネルに頼ることなく、企業と社員のつながりを利用して質の高い人材を確保する手法です。「信頼できる社員の声かけがあると選考に進みやすい」「一般的な転職市場の外側にいる人たちに届く」などの背景から、潜在的な転職意識のある人材(転職潜在層)に効果的にアプローチできるため、自社採用力を強化したい企業にとって大きなメリットがあり、注目されています。
採用費用の高騰
リファラル採用が注目されている背景には、採用コストの負担感の増大もあります。
中小企業に調査したデータ (図3) では、直近5年で採用コストが増加したと回答する企業が全体で約7割を占めています (中小企業庁, 2025)。
図3.

Note. From 中小企業庁 (2025). 2025年版中小企業白書
リファラル採用は、求人広告費や人材紹介会社の手数料といった外部コストがかからず、社員のネットワークを活用することで母集団形成に必要な費用を抑えられる点が特徴です。特に、採用活動に多くのコストをかけられない中小企業やベンチャー企業で多く導入されています。
リファラル採用に関する市場データ
縁故採用の割合
| 経路 | 人数 (千人) | 割合 (%) | |
|---|---|---|---|
| 入職者計 | 7,473.7 | ||
| 職業紹介機関等 | 職業安定所 | 984.9 | 13.2 |
| ハローワーク インターネットサービス | 241.0 | 3.2 | |
| 民営職業紹介所 | 569.9 | 7.6 | |
| 学校 | 453.7 | 6.1 | |
| 広告 | 2,477.5 | 33.1 | |
| その他 | 1,066.0 | 14.3 | |
| 縁故・出向等 | 縁故 | 1,509.0 | 20.2 |
| うち前の会社 | 328.3 | 4.4 | |
| 出向 | 114.3 | 1.5 | |
| 出向先からの復帰 | 57.5 | 0.8 | |
Note. Adapted from 厚生労働省 (2024). 令和6年 雇用動向調査結果の概要
日本での入職者のうち、縁故採用*1で入職している人は全体の20.2 %です。 これは求人広告に次ぐ割合となっており、主流な手法の1つと言えます。(ただし、「縁故採用」には「リファラル採用」以外のものも含まれるため、実際のリファラル採用の割合はもっと低くなるでしょう。)
業種年齢別の数値
図4
縁故採用の職種年齢別の内訳

Note. Adapted from 厚生労働省 (2024). 令和6年 雇用動向調査結果の概要
図4は縁故採用を職種年齢別で細分化したものです。サービス職では20代の割合が多くを占めていますが、そのほかの職業では年齢層は分散していることが見て取れます。一方職種別での偏りは大きく、縁故採用はホワイトカラーを中心に行われていることがわかります。
転職潜在層の割合
図5.
転職者数の推移 (左)
図6.
転職等希望者数の推移 (右)

Note. from 総務省統計局 (2024). 労働力調査(詳細集計)2024年(令和6年)平均結果の要約
図5、6は2024年までの転職者と転職等希望者の数の推移です。
転職等希望者の数が右肩上がりになっているだけでなく、転職等を希望している人の内、1年以内に転職した人の割合は32.9 % (2024年の転職者数÷2023年の転職等希望者数) であり、残りの67.1 % は「転職潜在層」と言えるでしょう。
リファラル採用に関する論文
レビュー論文
図7.
リファラルプロセスの細分化

Note. Adapted from Schlachter, S. D., & Pieper, J. R. (2019). Employee referral hiring in organizations: An integrative conceptual review, model, and agenda for future research. Journal of Applied Psychology, 104(11), 1325–1346.
Schlachter & Pieper (2019) はリファラル採用における86本の論文をレビュー (特定のテーマに関する既存の研究成果を調査・整理し、分析・要約) した論文を報告しました。このレビューでは、リファラル採用がなぜ機能するのかというメカニズム、その効果、そして留意すべきリスクについて、以下のような知見が示されています。
1. リファラル採用が機能するメカニズム
リファラル採用の効果を支える背景には、主に以下の理論や仮説が存在します。
- 現実的情報理論と定着率: 事前に仕事の現実的な情報(良い面も悪い面も)を得て入社するため、入社後のギャップが少なく、結果として離職率が低くなる傾向があります。
- ホモフォリー(類似性)現象と応募者層への影響: 「類は友を呼ぶ」現象のように、特定の属性や価値観を持つ人が集まりやすくなります。採用ソース自体が応募者層の質に影響を与え、例えば研究室のメーリングリスト経由でリファラルを行えば、そのコミュニティ特有の動機付けや質を持った候補者が集まります。
- 事前審査仮説(スクリーニング機能): 紹介した社員による暗黙のスクリーニングが行われています。従業員の81%が「自分が紹介した人が問題を起こしたらどうしよう」という社会的・評判的リスクを懸念していると報告した研究もあり、これが不適切な候補者を事前に排除するフィルターとして機能しています。
「弱いつながり」の重要性を説く主張もありますが、つながりが希薄すぎると、このスクリーニングの精度が下がる可能性も指摘されています。
2. インセンティブ設計と動機付け
紹介に対する報酬(インセンティブ)は、紹介した社員が抱く「リスク」などのネガティブな動機付けを相殺するために有効です。しかし、以下の点に注意が必要です。
- 金銭的報酬のバランス: インセンティブが高すぎると、紹介した社員がリスクを軽視し、事前審査が十分に行われないまま紹介してしまう恐れがあります。
- 内発的動機の重要性: 外発的動機(報酬)だけで内発的動機(会社への貢献欲求など)が伴わない場合、紹介される候補者の質が低下する傾向があります。
3. 選考プロセスと採用結果への影響
リファラル採用では、内定率や内定承諾率が高くなることが知られていますが、その背景には以下の3つの理由が考えられます。
- 高業績者への期待: 従業員は「高業績者が紹介する人は、同様に高業績者であるはずだ」と推測するため。
- 紹介した社員の影響力: 社内での紹介した社員の権力が作用するため。
- えこひいき: 個人的な好みが選考に影響するため。
実際に「高業績者は高業績者を紹介する」傾向がある一方で、リファラル採用者のパフォーマンスが他のチャネル採用者よりも高いかについては、肯定的な研究結果と変わらないとする研究結果が混在しています。また、リファラル採用者の収入が高い傾向は、一時的なものに留まるとされています。
4. 組織全体への波及効果とリスク
リファラル採用は、候補者だけでなく紹介した社員や組織全体にも影響を与えます。
- ポジティブな影響: 紹介した社員自身の離職率が低下する効果があります。ある研究では、リファラル採用が実施された会社において、従業員の離職率が21%低下し、業績が5.1%向上したと報告されています。
- ネガティブなリスク: 逆に、紹介した候補者が不採用となった場合、紹介した社員自身の離職率が上昇するというリスクも孕んでいます。
論文2: 報奨金と紹介意欲に関する論文
正の外発的動機付け (報奨金) が増加することによる「リファラル意欲」との関連性を研究したものがあります (Pieper, Greenwald & Schlacher, 2017)。
この研究では500ドル、1,500ドル、3,500ドルと報奨金を条件分けしています。わかったことは次の3つです。
- リファラル採用に対してリスクを感じている人では、報奨金が高い条件の方がリファラル意欲は有意*2に高かった。
- 報奨金を500ドルから1,500ドルに増やした場合、1,500ドル条件の方がリファラル意欲は有意に高かった。
- 組織への情緒的コミットメント*3が高い人では、報奨金を500ドルから3,500ドルに増やした際、3,500ドル条件の方がリファラル意欲は有意に低かった。
つまり、リファラル採用を成功させるには、単に報奨金を吊り上げるのではなく、そのターゲットとなる社員が『リファラル採用に対してリスクを懸念している層』なのか、それとも『会社に貢献したい層』なのかを見極め、金額を最適化する必要があるということです。
『リスクを懸念している層』へ高額な報奨金を与えることはリファラル採用への意欲を促進しますが、『会社に貢献したい層』には高額すぎる報奨金を与えると逆にリファラル採用への意欲を削ぐことにつながります。
論文3: リファラルは採用そのものの効果を助長する
リファラルに限らず、戦略的に採用を行うことは候補者の業績を予測します。リファラル採用では、採用の持つ候補者への効果を助長する可能性があります。先行研究で分かっていることは以下の2つです
- 個人と組織・職務への適合*4は、職務満足度と強い正の関連がある (Andela, & Doef, 2019)
- 職務において手続き的公正*5感があると入社後のワークエンゲージメントや組織コミットメントを正に予測する(Atmaja & Marika, 2024)
また、候補者だけでなく、紹介した社員の業績も向上することが知られています (Pieper et al., 2017)。これは、他採用チャネルに比べてソーシャル・エンリッチメント*6がより高まるためと判明しており、これは候補者・紹介した社員の2者間のみならず、リファラル採用が行われた職場の他従業員の組織コミットメントも高まると考えられます。
つまり、リファラル採用は採用そのものがもたらす会社への良い影響 (業績の向上など) を、リファラルというチャネルで採用することによって促進する可能性があるということです。
リファラル採用のメリット
リファラル採用は、企業、社員、応募者の三者にとって様々なメリットをもたらします。
採用コストの削減
リファラル採用は、人材紹介会社や求人媒体といった一般的な採用経路を経由しないため、採用コストを大幅に抑えることができます。仮に紹介した社員に対してインセンティブを支払う場合でも、求人媒体への掲載料や人材紹介会社への手数料と比較すると、かなりのコスト削減となります (表2) 。また、求人広告の作成や会社説明会の開催といった手間がかからないため、採用担当者の業務軽減や人件費削減効果も期待できます。
定着率の改善
応募者は、入社前に社員から企業の理念や社風、職場の雰囲気、仕事内容など、就労環境に関するリアルな情報を得ることができます。そのため、入社後のギャップが少なく、ミスマッチの防止につながり、人材の定着率が向上することがわかっています。
さらに、既に入社後に紹介者が自動的にメンターの役割を果たすことがわかっており、職場での関係値を構築しやすいことも定着率向上に影響していると考えられます。また、ほかの採用チャネルよりも選考プロセスに対する安心感を持つことで、会社への恩返し*7のような心理が働くと思われます。
転職活動に意欲的でない人を採用できる
リファラル採用は、転職市場に登録していない転職潜在層にアプローチできる点が大きな魅力です。転職を考えているが行動していない層以外にも、「自分の能力を発揮できる会社があれば転職したい」「自分に合う会社があれば転職したい」と考えているものの、具体的な転職活動を行っていない潜在層にも、社員の紹介を通して直接コンタクトが可能です。他社と競合することなく人材を採用できる可能性も秘めており、優秀な人材を転職市場に出る前に獲得できる可能性があります。
インフォーマルネットワークの構築につながる
リファラル採用は、既存社員の意識改革やエンゲージメント向上につながります。前述したように社員同士の関係値に影響するためです。また、社員は候補者に対し、企業理念や会社の魅力、自身の役割や会社の将来などを語ることで、自身のキャリアや会社の魅力を見つめ直すきっかけとなります。
自分の紹介した人物を会社が採用することになるため、社員の経営的視点が自然と育まれるという効果も期待できます。
自社の魅力を他者に伝える行為そのものが、従業員エンゲージメントを向上させる一因となると考えられます。
リファラル採用のデメリット・注意点
リファラル採用を導入する際には、いくつかのデメリットや注意点に十分な配慮が必要です。
多様性が損なわれる可能性がある
社員の個人的なつながりで採用活動が行われるため、性格や特性、能力が似通った人材が集まりやすい傾向があることがわかっています。組織の多様性が損なわれる (従業員の類似性が高まる) ことによる生産性の低下はいくつか実証結果が出ています (e.g. Garnero et al., 2013; Roberson & Park, 2006)。
多様性の確保があらゆる組織課題を解決する唯一解というわけではありませんが、リファラル採用では他の採用手法以上に多様性の維持に対して注意する必要があります。
不採用・早期離職による人間関係トラブル
紹介した人材が不採用となった場合、その人材と紹介者の人間関係が悪化することがわかっています。また、「自身が紹介した候補者が会社で問題を起こしたらどうしよう」と、社員がリファラル採用への協力を控えてしまうことも判明しています。さらに、紹介者の退職にともない、紹介された側も退職を検討してしまうといった、早期離職による連鎖リスクにも注意が必要です。
報奨金制度が逆効果になる可能性がある
リファラル採用では、社員の協力意欲を高めるために報酬(報奨金)制度を設けるケースが多いですが、金銭的な報酬を目当てとした紹介が増え候補者の質が低下するだけでなく、協力意欲がもともとある社員の意欲を逆に削いでしまうことも知られています。
また、報奨金によって高められる意欲に頭打ちがあることが知られています。報酬制度が不適切だと、逆に余計なコストがかかったり、費用対効果が得られなかったりする問題が生じる可能性もあります。
リファラル採用特有のミスマッチを生む可能性がある
リファラル採用が高い定着率などのメリットを生むとされる最大の理由は、紹介する社員による事前スクリーニングが機能することにあります。しかし、この前提が崩れると、本来のメリットは容易にデメリットへと転化してしまいます。まず、紹介者と候補者の結びつきが弱いと、紹介者によるスクリーニングが十分に起こらないことが知られています。さらに、紹介者に採用活動の知見がないと、人事部が求める要件を理解できず、意図せずミスマッチな人材を紹介してしまうリスクも高まります。
また、紹介者の顔を立てるために採用基準が曖昧になったり、候補者を入れようとするあまり、紹介者が会社のネガティブな情報を隠してしまうことがわかっています。
制度を作ればうまくいくわけではない
リファラル採用を成功させるためには、制度の導入だけでは効果を期待できません。
制度を社員に周知徹底させるための工夫、制度が定着するまでにある程度の時間を要するという覚悟 (長期的な視点) が必要です。
リファラル採用を実施する際のポイント(制度)
リファラル採用の選考フローを設計する
リファラル採用の仕組みやプロセスを社内で周知し、利用されやすいような仕組みをつくる必要があります。
選考の流れや判断基準を事前に整理し、制度として明確にすることで、社内での混乱や不公平感を防ぐことができます。
- 準備①ソーシャルグラフを描く
選考フローではありませんが、人の繋がりを用いて母集団形成をする際は「内定者」もしくは「新入社員」が最適です。 入社4年を過ぎると社外の人間関係が希薄になりがちだからです。まずは彼らが所属している (いた) 組織─アルバイトやゼミ、市民団体など─の中での人間関係を把握し、「ソーシャルグラフ」を描いて人の繋がりを把握します。
図8は、内定者・新入社員を起点に、アルバイト先やクラブ活動などのコミュニティへ紹介が広がっていくイメージを示しています。若手ほど社外のつながりが残っているため、紹介依頼の対象として最も有効です。このように、人間関係(ソーシャルグラフ)を可視化することで、リファラル採用における母集団形成を効率的に行うことができます。
図8.
ソーシャルグラフのイメージ - 準備②マイナス要素も社内に周知する
リファラル採用に限りませんが、自社で働く上で欲しい要素だけでなく、「ない方がいい」要素も考え社内に周知しましょう。自社に合わない候補者が選考に進むのを未然に防ぎ、スクリーニングの精度を高めることができます。
加えて、社員に自社の課題 (マイナス面) を正しく認識させることで、候補者に対して現実的な情報も包み隠さず伝えられるようになり、入社後のミスマッチを防ぐ準備が整います。 - イベント企画の設定
リファラル採用を行う際のコツは「応募ハードルを下げる」ことです。気軽に参加できるイベントを紹介したり、紹介者と採用担当者の3人で会食するなど、最初の接点は選考色をなくし、カジュアルにしましょう。いきなり会社説明会や面接に呼んだり、自社の会議室で面談を行うのはあまりお勧めできません。
また、これはマス広告を使った採用にも言えることですが、最初に合う段階では相手の志望度が低いことは前提として考えましょう。
重要視すべきなのは「参加者にとってそのイベントが魅力的かどうか」です。
「いい人材にリーチしたとき、その人を繋ぎ留める」ことを主眼に置き、「集客」のためのイベントにならないようにしましょう。
例えば新卒を狙うのであれば「就活支援イベント」や「キャリア相談会」は就活生が共通して魅力に感じるでしょう。
また、会う場所は相手の学校や職場、自宅の近く、喫茶店などが良いでしょう。 - 選考初期段階のスキップ
採用の知見を持った紹介者ならば、「自社に合う人材かどうか」を既にスクリーニングしていると考えられます。
応募ハードルを下げるためにも、エントリーシートや一次面接のような、選考の初期段階を免除するなどの施策があげられます。 - フォロー体制の強化
優秀な人材は引く手あまたです。せっかくの紹介が内定辞退に繋がらないようにフォロー体制は強化することをオススメします。
例えば、接触が長期間空いてしまうと候補者の温度は冷めてしまうため、目安2週間に1度は連絡を取りましょう。
候補者にあわせて接触媒体を調整することも有効です。
また、今後面接を行う際に、候補者に事前に適性検査を受検してもらい、結果のレーダーチャートから「突出している項目」「凹んでいる項目」の一致や「波形の大まかな形」・4象限に分かれた性格タイプなどから性格的な特徴が似た面接官をあてがうのも良いでしょう。
紹介した社員、候補者、採用担当の連絡ルールを丁寧に設計する
リファラル採用は「社員→候補者→企業」という関係構造に基づいています。この三者関係を円滑にするために、紹介した社員(社員)の役割を明確にすることが重要です。この三者関係は、役割や期待値を正しく設計すれば強力な武器となりますが、これらが曖昧なままだとトラブルの温床となります。特に不採用や辞退といったデリケートな場面では、そのリスクが顕著です。
だからこそ、あらかじめ「誰が・何を・どのタイミングで伝えるか」を運用ルール化しておく必要があります。
例えば、以下のようなものがあげられます。
- 初回接触は原則「カジュアル面談」とし、合否判定はしないことを名文化する
- 社員が約束できるのは書類選考スキップや面談確約までで、内定や通過を連想させる発言は控える
- 合否連絡は採用担当者から候補者へ直接行う
- 候補者に結果を通知する前日には紹介した社員へ結果を共有する
- 不採用の場合は紹介した社員に対して理由を説明する場を設ける
紹介した社員へのインセンティブ制度を設計する
社員がリファラル採用に積極的に協力するきっかけを作るため、紹介した社員に対するインセンティブ制度を設計する企業も多いです。
制度設計時には、以下の点を明確に取り決める必要があります。
- 報酬を支払う条件: 応募者の紹介があった時点、面談後、入社後、入社後一定期間経過後など、どのタイミングで支給するか。
- 報酬を支払う時期: 支給のタイミングはいつか。
- 報酬を支払う金額: 職種や採用難易度に応じて適切な金額を設定する。
- 10万~30万を設定すると良いでしょう。
- 法令遵守: 報酬は「賃金や給与」として支払い、就業規則や雇用契約に明記することで、有料職業紹介事業とみなされるリスクを回避する。
ただし、上記したように、金額によるインセンティブは一部の層に効果がなかったり有効な金額には頭打ちがあることが報告されているため、企業の風土や従業員の要望に合わせ、金銭以外での報酬を与えることも考えられます (特別有給休暇、旅行、会社表彰、人事評価加点など)。
リファラル採用を実施する際のポイント(運用)
制度を設計した後、それを機能させるための運用努力が成功の鍵を握ります。
社内への認知を何度も工夫して行う
リファラル採用を定着させるには、単に制度の存在を知ってもらうだけでなく、社員からの深い理解と納得を得る必要があります。制度を一度公表しただけでは社内への浸透には不十分なため、社内SNS、ミーティング、メールなど異なる手段を用いて繰り返し発信しましょう。
社内に推進ポスターを掲示して日常的に目に触れる機会を作ることや、実際にリファラル制度で入社した社員のインタビューを公開し、制度の成果を身近に感じてもらうことが有効です。他にも、社内に対して採用に関するアンケートを作成して調査し、協力的な社員を見つけ出して個別に動機付けを行ったり、メール配信の際には採用を行う背景や具体的な人材要件を絞り込んで詳しく伝えたりすることで、社員がより具体的に知人を想起できる環境を整えていくと良いでしょう。
経営、管理職サイドが自ら紹介する姿をみせる
経営層や部門責任者が制度の意義を語り、自ら紹介を推奨するアクションを起こすことで、制度の優先順位を高めることができるだけでなく、組織に紹介の空気や文化を作ることができます。加えて、上層部が実際に声をかけている対象が明確になることで、「誰を誘えばいいか」というターゲット像が固まり、社員が迷いなく候補者を探せるようになります。こうした環境づくりと基準の明確化によって、現場の心理的なハードルが下がり、社員は遠慮することなくスムーズにリファラルを行うことができます。「紹介する」という行動そのものを大切にする空気ができれば、無理をしなくても、量・質ともに良い紹介が自然と続いていくものです。
紹介者への感謝とフィードバックをスピーディかつ丁寧に行う
リファラル採用では、候補者だけでなく紹介者へのフォローもスピード感をもって行う必要があります。特に、紹介者が不採用となった場合は、会社への信頼を損ねたり、紹介者と応募者の人間関係に悪影響が出たりする可能性があります。トラブルを避けるために、紹介者には前もって不採用の理由を説明し、応募・紹介してくれたことへの感謝を伝える、応募者には採用担当者から選考結果を伝えるなど、関係者への細やかな配慮が必要です。
定期的な制度の見直しをする
リファラル採用を持続可能な採用チャネルとして確立させるためには、社員の紹介活動を可視化し、PDCAを回すことが不可欠です。導入後も、紹介者へのヒアリングをもとに採用までの課題を検証し、制度を改善していく必要があります。定期的に制度を見直し、改善を繰り返すことで、再現性を持たせましょう。
まずは小さく始める
制度が整ったら、最初から全社員に紹介を求めるのではなく、まずは小さい規模で始めます。社長や会社の幹部社員、愛社精神の高い社員など、エンゲージメントの高い社員を5~6名集めてプロジェクトを発足させるのが効果的です。プロジェクトを発足させた後、例えば3カ月以内で1人以上の採用実績をつくることを最初の段階の目標とします。実績を積んだら、全社員へとリファラル採用の実施を広げ、社員全員が「自分もリクルーターの一人」という認識を深めます。
リファラル採用を実施する上で必要な費用
リファラル採用は外部コストが抑えられる反面、社員の協力を得るための内部的な費用が発生します。
紹介報奨金
リファラル採用の成功報酬として、知人や友人を紹介して採用に至った社員に支払われる費用です。支給金額は企業によってさまざまですが、一般的には1人当たり10万円〜30万円程度が相場とされています。
高額すぎると職業安定法上の問題が生じるリスクがあるため、注意が必要です。
候補者の意欲醸成のための交際費
社員が知人や友人と食事の場を通して打ち合わせをする場合に、社員負担を軽減するため、飲食代などの交際費を会社が負担することも必要です。
ただし、会食が目的化してしまわないよう、事前申請を必須とする、誰と会食を行ったか記録を残すなど、成果につながるルール設定が大切です。
ツールを利用する場合の導入費用
リファラル採用の活動促進や管理を効率化するために、専用の外部サービスを利用する場合、その利用料金が発生します。ツールは、煩雑な手続きを簡略化したり、推進状況や社員の貢献度をデータ分析・可視化したりする機能を提供します。自社の制度設計に不安がある場合などは、ツールのコンサルティングサービスを利用することで手軽に導入できるメリットがあります。
リファラル採用、成功と失敗を分岐するパターン
リファラル採用の成否は、単なる制度の有無ではなく、運用方法と企業文化への定着にかかっています。
【成功パターン①】文化主導型
リファラル採用の理想形です。
制度や報酬といった仕組みそのものよりも先に「社員が自社を誇れる状態 (=エンゲージメントが高い状態) 」が作られているのが特徴です。リファラル採用が特別な業務ではなく、カルチャーの延長線上に位置づけられており、社員自身が会社のファンであるため、無理な動機付けが不要で、マッチ度の高い人材が集まりやすいです。
【成功パターン②】ネットワーク活用型
リファラル採用が成功するのは、転職市場に出てこない優秀な潜在層に効率よくアプローチできるからです。X、Facebook、noteなどのSNSやブログメディアや業界の勉強会などを通じて社員が自発的に自社の魅力や知見を発信することで、潜在層との接点を増やすことができます。日頃の発信により、候補者側がすでに会社の雰囲気や文化を知っているケースが多く、ミスマッチが少ないのも特徴です。
【失敗パターン①】報奨金頼み型
文化醸成や共感づくりを怠り、インセンティブのみを設計してリファラル採用を始めた結果、制度が形骸化したり、採用を行っても選考で不採用になり実績をあげられないケースがあります。
社員の紹介動機が報奨金目当てになると「数うちゃ当たる」動機が形成されてしまい候補者の質が低下したりミスマッチが増えます。また、紹介後のフィードバックや候補者への反応が遅かったりすると、報奨金があっても社員のモチベーションは低下してしまいます。
金銭的なインセンティブだけで社員は動かないため、「削減できたコストの一部を社員に還元する」という姿勢を示すことに留め、制度の主目的を報酬に置かないことが重要です。
【失敗パターン②】トップコミット欠如型
経営層や管理職が「採用は人事の仕事」と捉えて現場への関与が希薄になってしまうパターンです。人事部門だけで制度を運用しようとして孤立するケースは少なくありません。たとえ紹介が生まれたとしても経営層からの反応が無いと社員が「紹介が評価されない」と感じるだけでなく、採用が文化として根付かず形骸化してしまいます。
リファラル採用を導入するなら、専門家の採用コンサルティングを
リファラル採用は、低コストかつ効率的に企業風土に合った人材を集められるメリットがある一方で、適切な制度の整備、社内への浸透、運用、そしてPDCAサイクルを回すための工夫や労力、時間が必要です。
制度設計から広報施策の提案、改善施策の提示まで、リファラル採用に特化したコンサルティングを活用することで、貴社のリファラル採用の定着をご支援できます。
リファラル採用を阻害する要因を探りたい場合は、人事コンサルティングを
リファラル採用がうまく機能しない場合、その原因は制度の複雑さや周知不足だけでなく、社員のエンゲージメント低下や既存の職場環境にある可能性があります。社員が「この会社を友人に勧めたい」と思える職場環境や、会社への愛着・満足感が欠かせません。従業員のモチベーションや職場環境に対する本音を把握できる「HRクロス解析」などを活用することで、リファラル採用を阻害する要因を定性・定量の両側面から把握・改善し、制度の成功率を高めることができます。
註釈
*1 縁故採用のデータはあるがリファラル採用のみのデータはない。厚生労働省は「縁故採用 (リファラル採用) 」と同義的な記載をしている。
*2 統計的に、偶然ではなく差が発生していること。
*3 組織コミットメントは功利的コミットメントと情緒的コミットメントに分割される。
組織コミットメントとは「会社への帰属意識」の様なもので、情緒的コミットメントはその中でも特に「会社への愛着」「会社の価値観への共感」などがもとになっているものである (Takaki, 1997)。
*4 価値観の共鳴: 組織のミッションや文化的価値観に共感して入社した従業員は、自身の仕事に「意味」を見出しやすく、それが内発的動機づけとなり、高い熱意につながる。能力の適合: P-J Fit(スキルと職務要件の一致)は、業務遂行における自己効力感を高める。自分の能力を十分に発揮できる環境にあると感じる従業員は、仕事に対して活力を持ちやすく、フロー状態(没頭)に入りやすい (Andela, & Doef, 2019)。
*5 会社の決定過程の信頼性に関する知覚 (Hayashi & Obuchi, 1999)。
*6 社会化、関係の豊かさのこと (Pieper et al, 2017)。
*7 社会的交換理論という (Homans, 1958)。
引用文献
- Atmaja, D. R., & Marika, L. (2024). The influence of procedural justice on work engagement and turnover intention. Majalah Ilmiah Bijak, 21(1), 125–144.
- Andela, M., & van der Doef, M. (2019). A comprehensive assessment of the person–environment fit dimensions and their relationships with work-related outcomes. Journal of Career Development, 46(5), 567–582.
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