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公開:2025.05.24 最終更新:2026.02.04

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採用基準の作り方とは|具体例や項目一覧、設計プロセスを徹底解説

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採用基準を設定する重要性とは

採用基準を設定することは、なぜ重要なのでしょうか?一言で表すなら、「適切な人材を確実に採用し、組織の成長を支えるため」です。基準が不明確だと、面接官ごとに評価がばらつき、採るべき人を落としてしまう確率が高まります。その結果、企業に入社する人材のスキルや価値観、目指す方向性がバラバラになり、組織としての統一感が損なわれます。こうした状態では、企業の成長や安定的な発展は難しくなります。採用基準は、企業の未来を支える重要な土台です。

採用基準の定義

「採用基準」に似た言葉として「採用要件」「求める人物像」「ペルソナ」があり、混在して使われがちです。これらの4つの違いを整理し、前提を揃えるところから始めます。

ペルソナ:採用の設計をするための「具体的な仮想人物」

ペルソナは、採用活動を設計するための内部で使用する仮想人物です。主に、採用担当者が使用向けに作成する言葉です。年齢、経験、就職及び転職活動の軸、性格、価値観、などを具体化し、どのように接点を持つか、何をどう伝えるかといった施策を検討するために使用します。

求める人物像:会社として惹きつけたい「人のイメージ」

求める人物像は、採用したい人を一人の人間として表現したものです。主に、候補者や採用広報担当者向けに作成する言葉で、共感や動機づけを目的としています。そのため、多少の余白があり、抽象的な表現になることが多いです。

採用要件:募集のために外へ出す条件の「条件の表現」

採用要件は、候補者に向けて提示する募集条件です。主に、候補者や人材紹介会社向けに作成する言葉で、応募者自身が応募するかどうかを検討する上で使用されます。多くの場合、内部で使用する採用基準をそのまま出すのではなく、候補者が理解しやすいように、やや抽象化した表現になることが多いです。

採用基準:合否を判断するための「評価の基準」

採用基準とは、面接や選考で合否を決めるための判断軸です。主に、面接官や採用担当者等が使用するためのものです。面接官ごとの解釈差によって評価がブレないように、できる限り一義的な表現にすることが求められます。

当記事では、これら4つのうち、「採用基準」に焦点をあてた解説をします。

採用基準を明確化することの3つのメリット

ミスマッチを防ぎ、定着率を高められる

基準が曖昧だと「とりあえず優秀そうだから」という印象で採用してしまい、入社後に求める行動特性や価値観と合わずに早期離職につながることがあります。属人的で感覚的な判断によるものではなく、明確な採用基準をもちいることで、長期的に活躍できる人材を採用できる可能性が高まります。

公平性が高まり、企業ブランドが向上する

明確な採用基準があることで、すべての候補者を公平に評価できるようになります。個人の主観や偏見に左右されない選考は、候補者からの信頼を得ることにつながり、企業の評判向上にも寄与します。また、不採用となった候補者に対しても、明確な理由を伝えやすくなるため、納得感のあるフィードバックが可能になり、結果的に企業ブランドの向上につながる可能性があります。

円滑な連携により、採用活動全体の効率化につながる

採用基準を社内に共有することで、合否判断における議論が短縮され、採用スピードが上がり、限られたリソースを有効に活用することができます。

採用基準を構成する基本的な3つの側面

採用基準は、大きくスキル/行動思考特性/価値観の3つの側面から整理できます。それぞれの役割について解説します。

スキル(経験/知識/資格)

「何ができるか」を示す側面。
プログラミングスキル、会計知識、語学力など、職種や業界ごとに求められる要素は大きく異なります。スキルは履歴書、職務経歴書等で比較的確認がしやすい一方で、それだけで成果や定着を判断することはできません。

行動思考特性(性格/コンピテンシー)

「どのように考え、どのように行動するか」 を示す側面。
同じスキルをもっていても、直感的に判断する人か、情報を集めて慎重に判断する人の違いや、動いてから修正するか、合意形成を重視して進める人など、仕事の進め方には個人差があります。行動思考特性は適性検査でざっくりと把握をしつつ、過去の行動事実や、意思決定のプロセスから読み取ります。

価値観(動機/志向)

「何を大事にしているか」を示す側面。
ここでは、その人が持つ考え方や信念、判断基準を「価値観」とまとめます。成果を最優先するか、プロセスや誠実さを重視するか、個人の裁量かチームワーク、チームプレイを重視するか、などです。価値観の一致は、企業文化への適応、長期的な定着に大きく影響するため、採用時に慎重に見極める必要があります。

採用基準が曖昧だと何が起こる?

採用基準が曖昧だと、面接官の感覚や好みに依存し、必要なスキルや適性を満たさない人材を採用しやすくなります。その結果、入社後のギャップにより早期退職が増えたり、期待した成果が得られないリスクが高まることが考えられます。

採用基準を設定するプロセスと作り方

それでは採用基準を設定するためのプロセスを確認していきましょう。

まずは募集背景の確認から

採用の目的は、人員不足の解消、退職者の補充、新規事業やプロジェクトへの対応、組織強化、社員構成の見直し、長期的な人材投資などさまざまです。多くの場合、これらが複合的に絡み合い、現状をより良くするために採用が行われます。自社の募集背景を整理することで、適切な採用基準や計画を立てやすくなります。

採用市場の把握

自社の募集背景を確認したら、次に採用市場を把握します。採用活動を進めるうえで競合環境や人材の供給状況を確認し、これから採用基準を検討するための前提条件を整理しておきます。これにより、売り手市場かどうかに関わらず、自社の立ち位置や採用の現実を踏まえないまま、無自覚に採用基準が高くなってしまうことを防ぐことができます。

  • 競合他社の求人情報を調査する
    自社と同じ業界・職種で採用活動を行っている企業の求人情報を収集し、募集要項や給与水準、福利厚生、採用要件などを確認します。
  • 転職市場や学生の動向データを活用する
    人材紹介会社や求人媒体が発表しているレポート、厚生労働省や経済産業省の労働市場データ、大学のキャリアセンターの動向などを活用し、求職者の動向を確認します。

採用基準を考える2つのアプローチとメリット・デメリット

「採用基準」を考える際には、「帰納的アプローチ」と「演繹的アプローチ」の2つのアプローチがあります。

帰納的アプローチのメリット・デメリット

帰納的アプローチとは、自社で成果を上げている人材を分析し、彼らの能力や性格、志向をもとに求める人物像を導き出す方法です。具体的には、ハイパフォーマーへのインタビューや適性検査、アンケート、管理職層へのヒアリングを通じて、成果を生み出すための再現性の行動思考特性、価値観を抽出し、採用基準に反映させます。

この方法のメリットは、今活躍する可能性が高い人材を採用しやすくなります。

ただし、デメリットとして、分析対象は「現状の成功モデル」に基づくため、より高い成果を出せる可能性のある人材を見落とすリスクがあります。そのため、現在の成功要因が将来も有効とは限らない点を考慮する必要があります。

演繹的アプローチのメリット・デメリット

この方法は、自社の事業や組織を分析し、求める人物像を導き出す手法です。業務遂行に必要な能力や性格、志向を推定し、それをもとに採用基準を設定します。

この方法のメリット は、事業戦略や将来のビジョンに基づき、必要なスキルや資質を整理できるため、長期的な視点で採用を進めやすくなります。また、新たな視点で人材を発掘できる点も強みです。過去の成功事例にとらわれず、将来の成長に必要な素養を持つ人材を採用できるため、組織の変革や成長につながります。

ただし、デメリットとしては、この方法で導き出される人物像は 「理想像」 であり、必ずしも現実の制約を反映しているわけではありません。そのため、非現実的なスキルや市場に存在しない人材像を求めてしまうリスクには注意が必要です。

帰納的アプローチの例

もう少し詳しく帰納的アプローチ方法について見ていきましょう。

ハイパフォーマーへのインタビュー

社内のハイパフォーマーに対し、インタビューを実施します。これまでのキャリアや、自社を選んだ決め手、入社前に魅力を感じた点、仕事のやりがい、自社の社風など、幅広く質問し、彼らが自社をどのように捉えているのかを網羅的に聞き取ります。これにより、成功する人材の共通点や、自社の魅力を客観的に把握しやすくなります。さらに、インタビューでは「なぜ入社したのか」「何を思っているのか」だけでなく、「どのような行動特性を持っているのか」にも注目します。BEI(Behavioral Event Interview)という手法を活用し、ハイパフォーマーの具体的な行動や思考パターンを引き出すことで、より実践的な人材像を明確にすることができます。

適性検査の分析

インタビューでは定性的な情報しか得られないため、定量的なデータも収集しましょう。その手段として有効なのが適性検査です。適性検査を活用することで、ハイパフォーマーの特性や行動傾向を数値化・可視化できます。適性検査を取り入れることで、採用基準の策定における情報に厚みが出ます。

管理職層へのヒアリング

現場が求める能力と人事が設定する採用基準にズレがあると、入社後のギャップが生じ、オンボーディングがスムーズに進まない恐れがあります。そのため、どのような能力を持った状態で入社してほしいのか、評価をする立場の管理職層へのヒアリングとすり合わせを行いましょう。

例えば、多くの企業で採用基準に入っているコミュニケーション能力は、非常に多義的で認識のズレが起こりやすい言葉です。人が好きでたくさんの人とうまくやっていくことができる能力か、実現したいことをするために人を説得させる交渉ができる能力かなど、様々なコミュニケーション能力のうち何を求めているかが不明瞭です。このような認識の齟齬があることで、実務に適性のない人材を採用してしまうかもしれません。

とはいえ、採用活動をおこなったことのな管理職層にとって、解像度の高い人を表現する言葉で説明してもらうこと自体が難しいものです。求めている能力をうまく引き出すために、ぜひ下記リストをご活用ください。

演繹的アプローチの例

演繹的アプローチ方法についても同様に見ていきましょう。

経営層に、これから欲しい人材についてヒアリング

経営層に対し、今後必要な人材についてヒアリングを行います。この際、単に「どんな人がほしいか?」と尋ねるのではなく、事業戦略との関連性を明確にすることが重要です。例えば、「このポジションにはリーダーシップを発揮できる人材が必要か?」「専門知識を持つスペシャリスト型の人材が適しているのか?」「挑戦を恐れず柔軟に動ける人物が求められるのか?」といった具体的な視点で掘り下げることで、より明確な人材像を描くことができます。また、企業文化や価値観に適した人材の特性を議論することも重要です。スキルが優れていても、企業文化やチームの方向性に合わなければ長期的な活躍は難しくなります。そのため、「この会社で活躍する人の共通点は何か?」「組織に貢献できるのは、どのような考え方や姿勢を持つ人か?」といった視点を取り入れることで、より実践的な採用基準の設計につながります。

KFS(Key Factors for Success)から導く

会社の成功要因(KFS:Key Factors for Success)を明確にし、それを支える人材要件を導き出すこともできます。例えば、自動運転技術を開発する企業では、「技術革新のスピード」「安全基準の徹底」「グローバル市場への適応」などがKFSとなりうる要素です。これに基づき、必要な職種と職務要件(JD:Job Description)を定義します。「KFS → 職務要件 → 採用基準」の流れで整理することで、企業の成功に直結する人材像を明確にします。

RIASECから導く

候補者の適性を見極めるフレームワークとして、RIASECモデルを活用する方法もあります。RIASECは、心理学者ジョン・ホランドが提唱した職業適性モデルで、人の興味や行動特性を「現実的(R)」「研究的(I)」「芸術的(A)」「社会的(S)」「企業的(E)」「慣習的(C)」の6つに分類しています。エンジニアを採用する場合、「研究的(I)」や「現実的(R)」の要素が強い人材が適していると考えられます。一方、営業職では「企業的(E)」や「社会的(S)」の特性を持つ人材が活躍しやすいと思われます。このように、職種ごとに求められる特性をRIASECの観点から整理することで、適性の高い人材を見極めやすくなります。また、組織全体でどのタイプの人材が多いかを分析し、バランスを考慮することも可能です。

その他様々な情報から

KFSやRIASECだけでなく、多様な研究成果をもとに採用基準を設計できます。例えば、心理学の「ビッグファイブ理論」では、リーダーに求められる特性として「外向性」や「誠実性」が重要だとされています。この研究を採用基準に落とし込むなら、「人と円滑にコミュニケーションを取れるか」「目標に向かって粘り強く努力できるか」といった評価軸を設定できます。

その他にも、経済産業省が定義した人生100年時代の社会人基礎力も参考になります。各項目の詳細については、経済産業省の公式ホームページよりご確認ください。(人生100年時代の社会人基礎力

収集できた情報をもとに採用要素を絞り込む

本記事では、「採用要素(何を見るか)」と「レベル定義(どのレベルをどの程度評価するか)」までを含めて採用基準と呼びます。

帰納、演繹の両側面からの情報を整理すると、多種多様な要素が浮かび上がってくると思います。ここで重要なのが絞り込みです。すべてを兼ね備えた人物など世の中にはいません。必要な要件を盛り込みすぎると対象者が限定され、採用の自由度を狭めます。そのため、自社で育成が可能な要素はなるべく採用要素からは除くようにしましょう。

みずみずしい人物像(ペルソナ)で描写をする

採用要素の絞り込みができたら、面接官ごとで解釈差による評価のばらつきがおきないように、なるべく定義を一義的にするように心がけてください。ただし、要素の列挙のみだと人物の全体像を理解しにくいでしょう。採用担当者全員が、みずみずしい人物像をイメージできなければ、候補者の比較対象として利用できません。これは、生身の人間と抽象的な概念を比較できないからです。チャレンジ精神があるといっても、本田圭佑なのかイチローなのかによって意味もニュアンスも変わってきます。また同様に、リーダーシップがあるといっても、サラリーマン金太郎と、島耕作とでは、イメージするものが違うでしょう。

必要なのは商品サービス開発などでもちいられるペルソナ(名前・年齢・職歴・性格・趣味・ライフスタイルに至るまで細かく定めた架空の顧客像)のような仮想人物像です。自社の採用要素が、「どこで何をしているか」「自社に対してどんなイメージをもっているか」「このような情報を提供すると何を感じるか」などのイメージを、採用担当者、面接担当者間で共有できるようにしましょう。

ただし、ペルソナをつくったからといって、その人と全く同じ人を求める必要はありません。ペルソナを作る過程で、採用チーム全体の頭にあるイメージをすり合わせることに意味があるのです。

採用要素ごとの「レベル定義」の設定

採用要素がきまったら、要素ごとのレベル定義をします。ここでは一番設定難易度が高い行動思考特性(性格/コンピテンシー)についてのレベル定義の設定方法について解説します。

基本的なレベル定義の考え方

レベル1:受動行動
指示されたことをそのまま行動にうつしている
レベル2:通常行動
その状況において「当たり前」とされる行動
レベル3:能動行動
複数の選択肢から、明確な意図を持って最適な方法を選んで実行した行動
レベル4:創造行動
困難な状況においても諦めず、独自の工夫を加え突破しようとする行動
レベル5:変革行動
全く新たな、周囲にとって意味のある状況を作り出す行動

例1)主体性

レベル1判断の起点が常に外部にあり、明確な指示がないと動けない
レベル2目的は理解しているが、具体的な判断は他者に委ねる傾向が強い
レベル3自身の役割範囲内で、目的に照らした判断を行える
レベル4目的達成のために、役割や進め方そのものを調整できる
レベル5そもそもの目的設定や前提条件を問い直す判断ができる

例2)学習力

レベル1経験を振り返らず、同じ判断を繰り返す
レベル2良し悪しの振り返りはするが、抽象化されない
レベル3経験から判断のポイントを言語化できる
レベル4学びを別の状況にも応用できる
レベル5判断の型として整理し、他者にも共有できる

例3)チームワーク

レベル1自分の役割や正しさを優先し、周囲との調整は後回しになる
レベル2周囲への配慮はあるが、判断は自分起点に留まる
レベル3チームや関係者の状況を踏まえ、判断や進め方を調整できる
レベル4複数の立場や利害を考慮し、全体最適を意識した判断ができる
レベル5役割分担や関係性の前提を見直し、チームとして機能する形を整えられる

例4)やり切る力

レベル1想定外の障害があると、判断や行動が止まる
レベル2指示や支援があれば継続できるが、自律的な修正は難し
レベル3目的を踏まえ、自分なりに判断を調整しながら継続できる
レベル4障害や失敗を前提に、進め方を柔軟に組み替えられる
レベル5状況変化を織り込んだうえで、完遂までの道筋を再設計できる

例5)原因分析力

レベル1判起きた結果を事実として受け止めるにとどまる
レベル2表面的な原因を挙げることはできるが、構造的な理解は浅い
レベル3複数の要因を整理し、判断と結果の関係を説明できる
レベル4前提条件や判断の置き方そのものに目を向けられる
レベル5他の状況にも転用可能な原因構造として抽象化できる条件を問い直す判断ができる

採用基準を設定する際の注意点

採用基準の設定の重要性はすでにお伝えいたしましたが、やみくもに設定すればよいというものでもありません。そこで、採用基準を設定する際の注意点をいくつかご紹介いたします。

採用基準の合計点数のみで機械的に合否を出さないようにする

採用において、採用基準の合計点数だけで合否を決めるのはおすすめしていません。
1.重み付けの無視という問題
求める人物像に複数の要素がある場合、それらは同じ価値で数値化できるものではなく、重要度の高い要素には優先度が存在します。しかし単純な足し算では、その重みが反映されません。

2.突出した才能を評価できない
ある要素で圧倒的な強みを持つ人材に対して、本来なら大幅なプラス評価を与えるべきですが、点数の上限があるため十分に反映できません。

3.想定外の異能者を評価できない
評価シートは事前に設計された人物像しか測定できないため、想定外の強みやユニークさは合計点に反映されず、見落とされてしまいます。

そこで、「直感で合否を判断」→「採用基準をもとに確かめる」→「再度合否を確認する」 というプロセスを取り入れるのが有効です。まずは、候補者の印象や可能性を直感的に評価し、その後、具体的な採用基準で確認します。そして、最後に数値だけに頼らず、総合的な観点から再評価することで、機械的な点数評価では見落としがちな「本当に自社にフィットする人材」を見極めることができます。

設定してはいけない採用基準もある

採用基準を決めるときには、法律や倫理の観点から設定してはいけないものがあることを意識する必要があります。思想・信条、宗教、性別、年齢、国籍といった、仕事の能力とは関係のない要素を評価に含めてしまうと、差別に繋がるだけでなく、法的なリスクを招く可能性もあります。例えば、「経営理念に共感できること」を採用基準にする場合、単に「考えが合うかどうか」ではなく、「その理念をどのように仕事で活かせるか」という視点で評価することが大切です。また、雇用機会均等法では、性別や年齢を理由に採用の基準を決めることが禁止されています。「若い人がほしい」「この仕事は男性向き」といった基準を設けると、違法と判断される可能性があるので注意が必要です。採用基準を考えるときは、公平性を意識しながら、仕事に必要なスキルや適性をきちんと見極めることが重要です。候補者の属性や考え方ではなく、「この人が仕事でどんな力を発揮できるか」という視点で判断することが求められます。

厚生労働省 公正な採用選考の基本

採用において、候補者を見極める代表的な面接以外の3つの方法について解説します。それぞれの目的や役割を理解し、適切に活用しましょう。

採用基準をもとにした見極め方法

面接

面接では、設定した採用基準における行動思考特性が実際に発揮されるかを確かめます。ここで有効なのが、過去の行動事実を深く掘り下げる「STAR面接」です。
一般的なSTAR面接は「S(状況)」「T(課題)」「A(行動)」「R(結果)」を聞くものですが、これだけでは思考プロセスまで見えにくく、不十分です。表面的な行動(Action)だけでなく、「なぜその行動を選んだのか?」という思考プロセス(Thinking)、試行錯誤(Trial&Error)まで深掘りしましょう。

カテゴリ詳細代表的な質問例
Situation(状況)役割、程度、動機を中心に候補者が置かれていた状況を絵でイメージできるまで聞く「その中であなたはどんな役割を担っていましたか?」
Task(課題)目標や理想としている状態と当時の状況を確認し、候補者が何を課題として捉えたか聞く「目標や理想としていた状態を達成するために設定した課題について教えて下さい」
Thinking(思考)なぜその課題に設定したか、課題の原因、原因に対する対策生成力、選択した対策の思考プロセスを聞く「どのような情報から、その課題を設定しましたか?」
Action(対策)具体的な対策を聞く。どの程度継続しておこなったかなども聞く「その対策から結果が出るまでの試行錯誤について詳しく教えて下さい」
Trial&Error(試行錯誤)新たにうまれた障壁に対してどの用に試行錯誤をしたか聞く「その対策から結果が出るまでの試行錯誤について詳しく教えて下さい」
Result(結果)結果の甚だしさ、結果から学んだことを聞く「もし、もう一度全く同じ状況に取り組むとしたら、どこを変えますか?」

さらにSTAR+T2面接についての詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。

書類審査

書類審査は、候補者の基本情報を確認し、スクリーニングを行うプロセスです。主に履歴書や職務経歴書をもとに、学歴や職歴、スキル、資格などをチェックします。履歴書では、候補者の学歴や職歴の流れを把握し、転職回数やブランクの有無などにも注目することができます。職務経歴書からは、これまでの業務内容や実績、スキルの活用度合いを読み取ることができます。しかし、書類だけでは候補者の実際の能力や人柄を完全に把握することは難しいため、適性検査や面接と組み合わせて総合的に判断するようにしましょう。書類審査はあくまで一次フィルタとして活用し、面接での深掘りにつなげるための材料を集めるプロセスと位置づけるとよいでしょう。

適性検査

適性検査は、候補者の能力や性格特性を客観的に評価するための手段です。書類審査では見えにくい資質を数値化できるため、採用の判断材料として有効です。主に、認知能力を測る「能力検査」と、性格や価値観を把握する「性格検査」に分けられます。

能力検査には、論理的思考力や数的処理能力、言語理解力を測るテストがあります。図形の法則を見つける問題や、数式の規則性を問う問題などが一般的です。特定の職種では、高い論理的思考力や計算能力が求められるため、職務に適した能力が備わっているかを確認することができます。ただし、能力検査の結果が低くても、実務では別の強みを活かせる場合もあるため、柔軟に判断するようにしましょう。

性格検査では、候補者の価値観や行動特性、職務への適性を分析します。例えば、「リーダーシップを発揮するタイプか」「慎重に物事を進めるタイプか」などを測ることができ、組織文化との相性やチーム内での役割を判断する材料になります。ただし、候補者が「良い印象を与えよう」として本音とは異なる回答をするケースもあるため、面接と組み合わせて判断するのが望ましいです。

ワークサンプル 

ワークサンプルは、候補者が実務に近い課題に取り組むことで、そのスキルや適性を評価する方法です。履歴書や適性検査では測れない「実際のパフォーマンス」を確認するため、より実務に即した選考になります。ワークサンプルには、職種や業務内容に応じたさまざまな形式があります。エンジニア職であれば、コーディング課題を行ったり、クリエイティブ職であれば、デザイン課題を与えて作品を提出してもらうことが可能です。ワークサンプルでは「候補者がどのように業務を遂行するか」を具体的に確認できるため、入社後のミスマッチを防ぐ効果があります。また、候補者自身も業務の実態を体験できるためメリットになります。しかし、ワークサンプルの設計には注意が必要です。業務内容と大きくかけ離れた課題を設定してしまうと、候補者の適性を正しく測れない可能性があります。また、実施に時間やコストがかかるため、書類審査や適性検査と組み合わせて効率的に運用することが重要です。

今の採用基準は問題ない?チェックリスト

以下のチェックリストを活用し、現在の自社の採用基準が適切かどうかを確認しましょう。

  • 採用基準が抽象的すぎないか
  • 面接官ごとに解釈のズレが生じないよう、採用基準が明確化されているか
  • 「入社後に育成可能なスキル」を採用基準に設定していないか
  • 帰納的アプローチ(社内のハイパフォーマー分析)や演繹的アプローチ(経営方針・KFS・RIASECなど)など多面的な情報を集めた上で採用基準を検討できているか
  • 自社の採用基準について、関係者間で十分な議論ができているか
  • 書類審査、適性検査、ワークサンプルなど、採用基準ごとにどの手法が適切かを検討しきれているか
  • 合計点数だけで合否を決めていないか
  • 設定してはいけない採用基準を設定していないか
  • 採用後の人材の活躍状況を見ながら、定期的に採用基準を見直しているか

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