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公開:2025.11.27 最終更新:2025.11.27

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【保存版】採用課題の洗い出し方と解決策完全ガイド

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企業を取り巻く採用環境は、この数年で大きく変化しています。業界や企業規模にかかわらず、多くの企業が「応募が集まらない」「内定辞退が増えている」「求める人材と出会えない」といった課題に直面しています。背景には、労働市場の構造変化や働き方の多様化、学生・求職者の行動や価値観の変化など、複合的な要因が存在します。

こうした変化の中で、これまでの「待つ採用」だけでは成果が出にくくなり、企業側が戦略的に採用活動を設計し直す必要性がより高まっています。本記事では、現在の採用課題を整理しながら、その原因をひも解き、効果的な解決策の方向性を提示していきます。

採用の「正解」は企業によって異なりますが、共通する原則や意識しておくべきポイントは存在します。本記事が、自社の採用を改善し、持続的に人材を確保していくためのヒントになれば幸いです。

採用課題とは

採用課題とは、採用目標の達成を妨げる障害を指します。
単に「人が採れない」といった結果や成果だけでなく、「応募数が少ない」「選考辞退が多い」「内定承諾率が低い」など、採用プロセスの中で生じる非効率な状況も含まれます。たとえば、応募が集まっても求める人材に出会えない場合や、採用後の早期離職が相次ぐ場合も、結果的に再採用の手間とコストが発生するため、採用課題の一種といえます。

採用課題の原因は、社内の採用体制や情報発信の仕方だけでなく、外部環境にも影響されます。経済動向や業界トレンド、他社の求人条件、求職者の価値観の変化などが複雑に絡み合い、同じ企業でも時期によって課題の内容が変化することも珍しくありません。特に現在のように労働人口が減少し続け、売り手市場が定着している状況では、優秀な人材を確保するための企業間競争が一層激化しています。

こうした環境下で採用活動を成功させるためには、選考プロセスのどこに課題があるのかを正確に把握し、「なぜうまくいかないのか」を分析したうえで、迅速かつ効果的に改善策を講じていくことが重要です。継続的に採用課題を見直し、採用力を強化していくことが、これからの時代における人材獲得の鍵となります。

採用課題の外的要因/市場動向について

労働市場の変化

日本の労働市場は、構造的な人手不足が続いています。生産年齢人口(15〜64歳)は減少を続けており、総務省の調査によると、1995年の約8,700万人をピークに2024年には7,300万人台にまで減少しました。今後も減少傾向は続く見通しで、労働供給の不足は一層深刻化すると予測されています。

また、厚生労働省によると有効求人倍率は2024年時点でおよそ1.2倍前後と高水準を維持しており、求職者1人に対して複数の求人が存在する状況が続いています。企業にとっては「採りたい人材を確保できない」状態が常態化しており、経済産業省によると特にIT・エンジニア職など専門性の高い分野では2030年に約79万人の人材不足が予測されるなど、慢性的な人材不足が問題となっています。

このように、労働力の供給減少と需要の高止まりが同時に進むなかで、採用活動の難易度は年々上昇しています。こうした構造的な市場変化こそが、近年多くの企業が直面している「採用課題」の背景にあるといえます。

働き方の多様化

近年、リモートワークやフリーランス、複業(副業)といった働き方の選択肢が広がったことで、求職者の働き方に対する価値観は大きく変化しています。

内閣府の調査によると、「一つの会社で長く勤め上げる」よりも、「自分のライフスタイルやスキルに合った働き方をしたい」「変化に応じて色々な場所で自らキャリアを築きたい」といったキャリア観そのものも変わりつつあるのです。働く時間や場所に柔軟性を求める人が増え、昇進や年功序列よりもスキルや成果を重視する傾向も強まっています。企業側から見ると、こうした価値観のシフトは「従来型の雇用モデルや制度に依存していると、候補者とのミスマッチが生じやすい」ことを意味します。つまり、働き方の多様化とキャリア観の変化は、採用や人材マネジメントにおいて今や見過ごせない重要な潮流となっているのです。

新卒における、就職活動スケジュールの早期化と多様化

近年の新卒採用では、就職活動のスケジュールが年々多様化しています。以前は経団連の指針に基づき、「3月に広報解禁、6月に選考開始」というスケジュールが一般的でした。しかし、2018年以降、経団連が就活ルールの策定から撤退したことにより、企業ごとに独自の採用スケジュールを設定する動きが広がっています。結果として、企業と学生の双方で活動のタイミングが分散し、従来の「横並び型スケジュール」は実質的に崩れつつあります。

特に目立つのは、早期化の進行です。夏や秋のインターンシップを選考に直結させる企業が増え、大学3年生のうちに内々定を得る学生も少なくありません。一方で、卒業年度の秋以降まで就職活動を続ける学生もおり、活動期間の長期化も同時に進んでいます。このように、活動の「始まり」も「終わり」も人によって異なる状況が一般化しています。

また、業界や企業規模による違いも大きくなっています。外資系企業では従来から早期の選考が主流でしたが、国内の大手企業やベンチャー企業でも同様の動きが拡大しています。これにより、同じ年度に就職活動を行う学生でも、活動のピークが大きくずれる傾向があります。このようなスケジュールの多様化は、企業にとっても学生にとっても柔軟な対応を求めるものです。企業側は、自社の採用戦略に合った時期に学生と接点を持つ設計が必要になり、学生側は、志望業界の動きを早めに把握し、最適なタイミングで行動を取ることが重要になっています。

採用手法とテクノロジーの進化

採用チャネルの選択肢も格段に増えています。従来の求人広告・ナビサイト・合同説明会に加え、社内リファラル、ダイレクトリクルーティング、SNSによるスカウト、オンライングループ説明会など、多様なアプローチが一般化しています。これにより、企業にとっては「どこで・どう出会うか」の設計が大きく変化しており、チャネル戦略自体が採用競争力の鍵となっています。

さらに、AIやHRテクノロジーの活用が採用現場において急速に進んでいます。例えば、応募者データを解析し、候補者ごとに最適なスカウトメッセージを自動で生成・配信する「AIスカウト」や、映像・音声に基づいて面接結果を解析・評価する「AI面接」などが登場しています。採用チャネルの多様化とテクノロジーの進化は、企業がどのように人材と出会い、見極め、惹きつけるかというプロセスそのものを大きく変えつつあります。

採用課題の外的要因/2025年、最新動向について

業界・企業規模ごとの需要格差の拡大

人口減少により「採りたい人材を確保できない」状態が続いていると前述しましたが、実はすべての企業が採用難に陥っているわけではありません。図1のデータはリクルートによる2025年の大卒求人倍率の調査、「従業員規模別求人倍率の推移」のグラフです。2026年3月時点では、従業員規模5,000人以上の大企業の求人倍率は0.34倍であり、「求人数」より「候補者」が多い、いわば買い手市場の状況です。一方、従業員規模300人未満の中小企業では8.98倍と、大企業の26倍以上の求人倍率となっています。市場全体としては売り手市場が続くものの、企業規模によって採用課題の深刻度はまったく異なることがわかります。

「従業員規模別 求人倍率の推移」

図1(リクルート(2025)『第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)』「従業員規模別 求人倍率の推移」)

また、採用難の度合いは業種によっても大きく異なります。図2は同じくリクルートによる2025年の大卒求人倍率調査の「業種別 求人倍率の推移」データを表したものです。下段のグラフの「金融業」「サービス・情報業」「情報通信業」「サービス業」は倍率が1を下回り、比較的採用しやすい状況が続いています。一方、上段のグラフにある「建設表・製造業他」「建設業」「製造業」「流通業」は求人倍率が1を超え、中には8倍以上に達する業種も存在します。こうしたデータから、業種間での人材需要格差が年々拡大していることが読み取れます。

「業種別 求人倍率の推移」

図2(リクルート(2025)『第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)』「従業員規模別 求人倍率の推移」)

学生の進路選択の保守化と安定志向の強まり

働き方の多様化が進む中、学生のキャリア選択における優先順位にも変化が見られます。リクルートによる「2025年新卒採用大学生の就職活動に関する調査」によると、学生が仕事に求めることの1位は「安定」、次いで「貢献」「金銭」「成長」と並ぶ結果になりました(図3)。2020年卒以降、大きな順位変動は見られないものの、「貢献」「成長」の重視度はわずかに低下しており、1位の「安定」との差が広がる傾向にあります。まずは安定した環境を確保したいという意識が、これまで以上に強まっていると考えられます。

「仕事に求めること」

図3(リクルート(2024)『2025年新卒採用大学生の就職活動に関する調査』「仕事に求めること」)


さらに、同調査の「内々定企業に応募したきっかけ」を見ると、最も多かった回答は「勤務地」となっています(図4)。23卒までは「業界に興味があったから」が1位でしたが、近年ではその割合が減少し、勤務地=生活環境の安定を優先する学生が増えています。キャリア形成や挑戦よりも、日常生活の基盤を整えられる就業環境を重視する層が拡大している、と考えられます。

「内(々)定企業に応募したきっかけ」

図4(リクルート(2024)『2025年新卒採用大学生の就職活動に関する調査』「内(々)定企業に応募したきっかけ」)

採用課題を把握する方法

採用活動における改善策を検討するためには、まず自社がどの段階で課題を抱えているのかを正確に把握することが欠かせません。感覚や経験則だけでは判断がぶれやすく、的確な施策につながらないケースも多くあります。そのため、採用プロセス全体を数字で捉え、客観的に現状を把握する視点が求められます。

以下では、採用課題を見極めるうえで前提となる基本用語や計算方法を整理したうえで、どのような切り口でデータを読み解くと課題が明確になるのかを解説していきます。

採用課題を把握する上で前提となる用語の解説と計算方法について

採用課題を正確に把握するためには、まず前提となる指標や用語の意味を理解しておくことが重要です。ここでは、採用活動を分析する上で基礎となる主要な用語と、その計算方法について解説します。

採用歩留まりとは

受験率

受験率とは、「エントリーした学生のうち、実際に選考(面接や筆記試験など)に参加した割合」を指します。

<計算式>
受験率(%) = 選考参加者数 ÷ エントリー者数 ×100

一般的な相場としては、40%前後が標準的であり、高くても60%程度でしょう。

10%を下回ることは稀で、その場合は応募段階で学生の温度感が低い、もしくは応募後のフォローや選考導線に課題がある可能性が高いといえます。

面接通過率

面接通過率とは、面接を受けた候補者のうち、次の選考に進んだ割合を指します。

<計算式>

面接通過率(%) = 合格者数 ÷ 面接受験者数 ×100

この数値が高ければ、面接を通して適切に候補者を選考できている可能性が高く、低ければ「合格基準が厳しすぎる」「評価基準が統一されていない」などの課題が考えられます。

なお、各面接ステップごとの通過率の目安としては、1回あたりおよそ30%前後が一般的です。最終的な内定率(内定者 ÷ 受験者)が1%の場合、4段階の選考を行う企業では各ステップで約30%ずつ通過する計算です。10〜20%程度しか通過しない場合は、候補者を「落としすぎている」可能性があり、選考プロセスや評価設計を見直す必要があるでしょう。

途中辞退率

途中辞退率とは、選考全体の受験者のうち、最終結果が出る前に辞退した人の割合を指します。

<計算式>

途中辞退率(%) = 選考途中で辞退した人数 ÷ 全受験者数 ×100

多くの企業では面接ごとの辞退率のみを追っているケースもありますが、全プロセスを通じた途中辞退率を把握しないと、実際の離脱状況を過小評価してしまう可能性があります。

一般的な相場としては、30%前後が平均的な水準です。50%を超えるような場合は、候補者体験・面接間の待機期間・企業側の連絡対応など、何らかの要因によって辞退が増加している可能性が高いといえます。

内定辞退率

内定辞退率とは、内定を出した候補者のうち、内定を受諾せずに辞退した人の割合を指します。

<計算式>

内定辞退率(%) = 内定辞退者数 ÷ 内定出者数 ×100

一般的な相場は30%前後とされますが、最近では50%を超えるケースも珍しくありません。この数値は単純に「低ければ良い」とは限らず、企業の採用スタンスによって解釈が異なります。

たとえば、競合が少ない業界で「守りの採用」を行っている場合は辞退率が低くなりやすく、反対に優秀層や他社からも引き合いの強い人材を積極的に狙う「攻めの採用」では、辞退率が高くなる傾向があります。したがって、内定辞退率はKPIとして単独で評価するのではなく、採用戦略や対象人材層とあわせて分析する必要があります。

リードタイム

リードタイムとは、採用プロセスの各ステップ間に要した期間を指します。

どの工程で時間がかかっているかを明らかにし、採用スピードやオペレーションの改善につなげるための重要な指標です。例として、以下のようにステップを区切って計算します。

  • 書類選考案内~書類提出 = 書類提出日 − 書類案内送付日
  • 書類提出~合格通知 = 合格通知日 − 書類提出日
  • 合格通知~面接調整 = 面接調整完了日 − 合格通知日
  • 面接調整~面接実施 = 面接実施日 − 面接調整完了日
  • 面接実施~内定通知 = 内定通知日 − 面接実施日
  • 内定通知~内定承諾 = 内定承諾日 − 内定通知日

このようにリードタイムを各工程ごとに細かく把握することで、採用全体のボトルネックを可視化でき、どこに改善余地があるのかを明確にすることができます。

なお、オペレーションスピードをみたい場合は、営業日で、候補者の体感スピードをみたい場合は実日数で計算するとよいでしょう。

様々な切り口で数字をみる

上記の数値を算出したら、それらを「属性別(例:職種・面接官・採用チャネルなど)」や「時期別(例:月別・クール別・年度別など)」に分けて確認することが重要です。たとえば、全体の受験率や通過率が平均的に見えても、特定の職種で大きなばらつきがある場合、それはオペレーションの標準化ができていない可能性があります。同様に、面接官ごとに通過率・辞退率を比較すると、選考基準や目線、候補者体験に関する改善ポイントを発見できることもあります。

さらに、数字を見る際には、ただ細かく分解するだけでなく、「どの部分が採用結果に最も大きな影響を与えているのか」=インパクトポイントを特定する視点が重要です。たとえば、辞退率がやや高いように見えても、実は応募数そのものが大きく不足しているほうが採用結果に与える影響は大きい、といったケースはよくあります。採用活動のどこに本質的なボトルネックがあるのかを把握することが、改善の優先順位を決めるうえで欠かせません。

そのうえで、採用データでは以下のような切り口で数字を確認すると課題が可視化しやすくなります。

  • 時系列(推移)
    ・前年同時期との比較
    ・月別・クール別の受験率・辞退率の推移変化
    → 時期ごとの特徴や施策の効果が見えやすくなる
  • 属性別
    ・職種別の通過率
    ・面接官別の合格率・辞退率
    ・チャネル別(ナビ/リクルーター/紹介など)の歩留まり
    → 全体平均では隠れがちな「偏り」や「異常値」を発見できる
  • プロセス別
    ・応募→受験→一次面接→内定…など、ステップごとの歩留まりを比較
    ・「どの段階で最も人が減っているのか」を可視化
    → 採用結果に強く影響しているボトルネックを明確にできる

このように、多角的な切り口で数字を捉えながら、どの部分が採用成功に最も大きな影響を与えているのかを見極めることで、正しい課題設定と効果的な改善につながります。

参考図書:後 正武(1998)『意思決定のための「分析の技術」』ダイヤモンド社

採用課題と解決策:集まっていない編

採用活動の出発点となるのが「母集団形成」です。どれだけ選考設計を整えても、そもそも候補者が十分に集まっていなければ、採用成功の可能性は大きく制限されてしまいます。近年は学生の志向や行動が多様化し、従来の手法だけでは必要な人数を確保しにくい状況が続いています。なぜ自社に候補者が集まらないのか、その要因を分解し、効果的に母集団を形成するための視点と対策について整理していきます。

スカウト媒体経由で集まっていない

スカウトの改善

スカウト媒体で応募や面談設定が集まらない場合、まず確認すべきは「そもそも行動できているか」です。スカウト送信数が十分でない、もしくは対象者・候補者層が狭すぎると、そもそも母集団が形成されません。媒体ごとの特性を踏まえ、以下のポイントでターゲット数・送信頻度・文面改善のサイクルを一定のリズムで回せているかをチェックすることが第一歩です。

開封率・承諾率の改善

次に、開封率・承諾率(スカウトを開封・返信してくれた割合)を高めるための工夫ができているかを確認します。スカウト文面が汎用的すぎたり、企業やポジションの魅力が伝わらなかったりすると、候補者に響きません。候補者のプロフィールに合わせたパーソナライズされた内容にすることや、「なぜあなたに声をかけたのか」を明確に示すことが承諾率向上に繋がります。

また、開封率が低い場合は件名・配信時間帯・送信タイミングの最適化も重要です。

調整率の改善

さらに、「調整率(承諾後に実際に面談・面接へつながった割合)」を上げる動きができているかも見直す必要があります。返信をもらった後のレスポンススピードが遅い、面談候補日が少ない、または柔軟な形式(オンライン可など)が用意されていない場合、せっかくの接点を逃してしまいます。承諾から調整までのリードタイムを短縮し、候補者がスムーズに次のステップに進める環境を整えることが、結果的にスカウト経由の母集団を増やすことにつながります。

スカウトは「送るだけ」では成果につながりません。送信数 → 承諾率 → 調整率の各段階において、数字を見ながら改善サイクルを回せているかを定期的に振り返ることが重要です。

とはいえ、日々の運用の中でこれらを定量的に管理し、改善サイクルを回すのは容易ではありません。

そこで、スカウト運用のPDCAを仕組み化するためのExcel管理ツールを紹介します。

<スカウトPDCAシート>
企業からスカウトを送信して候補者と接触するタイプの採用サービス(ダイレクトリクルーティング媒体)において、より接触できる候補者数を増やすためのPDCAを行うExcelです。複数の作業者で候補者プールを作り、別の方が評価を入れた上で、評価判定が合格の候補者のみにスカウトを送る運用を想定しています。

エージェント経由で集まっていない

エージェントへのアクションと質の改善

エージェント経由の応募が伸びない場合、まず見直すべきは「動きの量」と「情報の質」です。紹介数が少ないと感じるとき、単純に「エージェントが動いていない」のではなく、企業側からの情報提供や関係構築が十分にできていないケースも多く見られます。まずは、エージェント担当者との定例ミーティングや進捗共有の頻度を確認しましょう。ポジション情報や採用基準を明確に伝えられていなければ、エージェント側で候補者を的確に提案できません。職務内容・採用背景・魅力訴求ポイントなどを具体的に共有できているかを振り返ることが大切です。

紹介フィードバックの改善

次に、紹介後のフィードバックスピードも成果を左右します。候補者を紹介しても、合否連絡や評価コメントが遅いと、エージェントは動きにくくなり、紹介優先度が下がります。特に競合他社と同時進行で動いている場合、レスポンスの遅れがそのまま「他社流れ」につながるため、1〜2営業日以内のリアクションを意識しましょう。

選考通過率の改善

さらに、書類通過率や内定率が低い場合は、エージェントの紹介数が減少する傾向があります。人材不足の昨今は、限られた候補者の中で企業を提案しているため、応募しても通過しない企業には、どうしても紹介の優先度が下がってしまうのです。特に書類通過率が著しく低く、エージェントからの紹介数も減少している場合は、採用基準が厳しすぎたり、評価基準が共有できていなかったりする可能性があります。

エージェント戦略の策定

また、エージェントとの付き合い方には、特定のパートナーに深く入り込み、密な協力体制で多くの紹介を得る「集中型」の戦略もあれば、複数社と幅広く接点を持ち、機会損失を防ぐ「分散型」の戦略もあります。どちらの方針をとるにしても、ポジションの要件や採用背景、求める人物像を明確に伝え、互いの期待値を合わせておくことが重要です。

ナビサイト経由で集まっていない

ナビサイト経由の集客は、量と質の両面を確認する必要があります。

「見つけてもらえていないのか」「魅力が伝わっていないのか」「そもそも媒体上に自社ターゲットがいないのか」「応募してもらえていないのか」、この4つの観点から原因を整理し、数値(PV、クリック率、応募率、属性分布など)をもとに仮説検証を行うことが、改善の第一歩となります。

母集団適合性の確認

ナビサイトからの応募が集まらない場合、まず確認すべきは「母集団の適合性」です。単に応募数が少ないからといってナビサイト自体が悪いとは限らず、「そもそもその媒体に自社が求める層が十分に存在しているか」という視点が欠かせません。たとえば、専門性の高い職種や即戦力採用を目的としている場合、ナビサイト上の登録者層(学生属性・業種志向・地域分布など)が自社のターゲットと乖離しているケースもあります。まずは、媒体の登録者データや過去応募者の傾向を確認し、母集団のマッチ度を把握することが重要です。そのうえで、媒体の特性と自社の採用目的が合致していなければ、別チャネル(スカウト媒体・専門職向け媒体・SNS広告など)への変更も検討する必要があります。

露出量と更新頻度の見直し

次に、ナビサイト内での露出量と更新頻度を見直しましょう。検索順位やおすすめ表示は、更新や反応率によって変動します。写真・タイトル・PR文を定期的に更新し、掲載中も「動き続けている求人」としてアルゴリズム上で優位に保つのがポイントです。

訴求内容の改善

さらに、訴求内容も応募率を左右します。仕事内容や条件だけでなく、「どんな人が活躍しているのか」「入社後にどんな成長ができるのか」など、応募者が自分の姿を想像できる情報を入れることで、クリック率・応募率の向上につながります。

応募導線の改善

そしてもう一つ重要なのが、応募導線の設計です。説明会予約やエントリーボタンまでの導線が複雑だったり、複数クリックを要したりすると、離脱率が高まります。応募完了までのクリック数を減らし、視覚的にわかりやすい導線を整えることが離脱防止の鍵です。

ほしい人材から応募が来ていない

「ほしい人材から応募が来ていない」状況は、単なる打ち出し不足ではなく、ターゲットの解像度の低さと、チャネル・訴求のズレから生じていることが多いのです。誰に来てほしいのかを具体的に描き、その人物の行動・心理に寄り添ったチャネル設計とメッセージづくりを行うことで、理想の応募層に近づけることができます。

ターゲットの明確化

応募は集まっているものの、「求める人材像」と実際の応募者層がずれている場合、まず見直すべきはターゲットの明確化です。どんな人に来てほしいのかを、年次・専攻・経験・志向性などの表層だけでなく、「どんな就職活動をしていそうか」「どんな情報に共感しそうか」といった行動レベルまで具体的に描き出すことが重要です。

たとえば、「論理的思考が得意な学生」と定義するだけでなく、「複数社のコンサル企業を並行して見ており、選考スピードや成長環境を重視している」といったように、「一人の人物像としての解像度」を高めて設定します。

チャネルの再検討

そのうえで、チャネルの再検討を行いましょう。ナビサイトや合同説明会に頼っても、ターゲット層がそこにいなければ効果は出ません。スカウト媒体・SNS広告・オープンカンパニー・専門職向けイベントなど、ターゲットの情報接触行動に合わせたチャネル選定が必要です。「どこにいるか」ではなく、「その人がどんな情報を見て動くか」を基準に設計することが、精度の高い母集団形成につながります。

文面の改善

さらに、広告文面や求人票の内容、スカウト文面も見直すべきポイントです。ターゲットがどんな言葉に反応するかを意識し、一般的な表現ではなく、「その人一人に語りかけるようなメッセージ」にすることが重要です。企業として伝えたいことよりも、「その候補者」が知りたいことを中心に構成し、訴求軸を明確にしましょう。

採用課題と解決策:逃げられている編

採用活動では「応募が来ない」「落としすぎている」だけでなく、せっかく出会えた候補者に「逃げられてしまう」ことが大きな課題になる場合があります。選考途中での辞退、内定後の他社決定、連絡途絶など、候補者が離脱する理由は多岐に渡りますが、その多くは企業側のコミュニケーションやプロセス設計によって防ぐことができます。

 選考の入口で逃げられている

候補者と初期接触まではできているものの、実際に選考へ参加してもらえないという課題は非常に多く見られます。ここで重要なのは、「候補者が関心を持った瞬間に、次の行動につなげられているか」というスピードとアプローチの質です。たとえばスカウト返信やイベント参加後、企業側の反応が遅かったり、案内が一般的すぎたりすると、候補者は「この会社は本気で自分に関心があるのか?」と感じて離脱してしまいます。初期接触から面談設定までのリードタイムを短縮し、候補者の熱が冷める前に「次の一手」を打てているかがポイントです。

また、初回の案内やメッセージは、「自社が伝えたい情報」ではなく「候補者が動きたくなる情報」になっているかを見直しましょう。学生であれば、「どんな社員と話せるのか」「その面談で得られるメリット」が明確になっているかが鍵になります。この段階では、単なる「情報提供」ではなく「行動喚起」を意識したメッセージ設計が重要です。

さらに、候補者管理上の課題も見逃せません。スカウトやイベント経由で接触した候補者が、誰の担当で、どの段階にいるのかをチーム全体で把握できていないと、対応漏れや重複が発生します。担当者間で情報共有できる仕組みを整え、初動対応のPDCAを回せているかをチェックしましょう。

選考中に逃げられている

選考に入った後の離脱は、多くの場合候補者体験への不満とスピードの遅れが原因です。特に新卒採用では、候補者が複数社の選考を同時進行しているため、1回の連絡遅延がそのまま他社流出につながることを理解しておく必要があります。以下に「逃げられない」ための改善ポイントをまとめました。

選考フローの「重さ」と「テンポ」の改善

以下のような状態は、候補者の意欲を大きく下げます。

  • 面接官に会うまでの期間が長い
  • 面接回数が多い
  • 合否連絡が遅い
  • 選考ステップの内容が重い(例:文量の多いES)

<改善ポイント>

  • 本当に必要なステップだけになっているか
  • 選考と選考の間のリードタイムが長くないか
  • ES軽量化など、候補者負担を最適化できるか

面接官の対応品質の改善

面接官は単なる評価者ではなく、「自社の代表として候補者を惹きつける役割」を担っています。以下のような面接官の特徴は、離脱に繋がる可能性があります。口コミサイトが一般化した今、候補者対応の質はそのまま企業イメージにつながることを意識しましょう。

  • 会話が一方的
  • 雰囲気が硬すぎる
  • 候補者の話を深掘りしない
  • 形式的・事務的な質問ばかり
  • 圧迫的な姿勢(論外)

<改善ポイント>

  • 面接官ごとの通過率・辞退率をモニタリング
  • ばらつきが大きければトレーニングやフィードバックを実施

面接官フォローの徹底

選考の間隔が空くと、候補者は不安になり、他社に気持ちが流れやすくなります。フォローも「選考体験の一部」と捉えることが重要です。以下のような簡単なフォローの積み重ねが結果を左右することになるのです。

  • 合否結果までの途中連絡
  • 面接日のリマインド
  • 会社情報・担当者からのメッセージ共有
  • 状況確認の簡易なコミュニケーション

<改善ポイント>

  • フォローを属人化させない
  • チームで候補者情報を共有し、一貫した対応ができる体制を整える

現場社員の協力が離脱防止のカギ

以上のような選考体験を改善するにあたっては、現場社員の協力が欠かせません。良い候補者体験は人事だけでは作れず、現場がどれだけ採用に本気で向き合えるかが大きく影響します。現場社員が魅力を語れることで候補者の志望度は上がりますし、スケジュール調整・フィードバック連携もスムーズになります。最終的には「全社で候補者を迎えに行く姿勢」をつくれるかどうかが、選考の強さにつながります。

内定後に逃げられている

内定後の辞退や承諾保留が多い場合、原因の多くはフォローのタイミングと内容のズレにあります。内定を出して安心してしまい、承諾までの期間にコミュニケーションが途切れてしまうと、他社の内定者フォローに負けてしまいます。

まず見直したいのは、内定通知から承諾までのリードタイムです。候補者の心理は刻一刻と変化しており、「迷っている時間」が長いほど離脱リスクは高まります。内定直後からの定期的なフォロー接点を設け、候補者の意向変化を早期に察知できる体制が理想です。

次に重要なのが、候補者ごとのフォロー内容の個別最適化です。全員に同じ資料・同じ連絡を送っても効果は限定的です。候補者が何を重視して意思決定するのか、たとえば「成長機会」「働き方」「社風」「勤務地」などをヒアリングし、その要素に対して自社がどう応えられるかを丁寧に伝えていく必要があります。また、同じ内定者フォローでも、相手のタイプを見極めてコミュニケーションを変えることで、承諾率を大きく改善することが可能です。学生の意思決定スタイルは、以下の4つに切り分けることができます。

  • 決断型
    限られた情報から瞬時に判断できるタイプです。感覚的に「ここだ」と思えば一気に進み、迷わず結論を出します。このタイプは、「自分を評価してくれている」と感じた瞬間に心が動きます。逆に、「もう少し考えていいですよ」と距離を置かれると、自分への期待値が低いと受け取り、あっという間に他社へ流れてしまいます。したがって、内定通知の際には即時に評価と期待を伝えることが鍵です。「あなたに来てほしい」というストレートなメッセージや、役割を明確にした提案が有効。内定後のフォローは「スピード勝負」であり、時間をかけすぎると戻ってこないリスクが高いタイプです。
  • 論理型
    情報量よりも「一貫性」や「整合性」を重視します。感情的な勢いで動くのではなく、論理の通った筋道が立っているかを見て判断します。このタイプにとって最大の離脱要因は、発言や資料に矛盾があることです。場当たり的な説明や、「とりあえず伝えたいことを全部言う」ような情報提供は逆効果になります。効果的なアプローチは、会社の方針や制度、キャリアの流れを一つのストーリーとして構成し、矛盾のない説明を徹底することです。面接官や人事、役員がそれぞれ違う言葉で語ると、即座に信頼を失います。資料や数字、事例を整合的に見せ、「この会社は筋が通っている」と思わせることが内定承諾の鍵になります。
  • 柔軟型
    集める情報量自体は多くないものの、噂や評判、ネット上の口コミなどに強く影響されやすいタイプです。自分の中で少しでも「不安材料」があると、それを増幅して考え込んでしまう傾向があります。このタイプへのフォローでは、「予防接種」のような事前説明が有効です。SNSや掲示板で出ている誤情報、あるいは誤解されやすい点を、あらかじめ中立的な言葉で説明しておく。最後の段階で言い訳のように弁明すると、むしろ不信感を生みます。柔軟型は感情に共感してくれる人に心を開きやすく、安心できる小さな接点を何度か重ねることで信頼が積み上がります。説明よりも誠実なフォローが効果を発揮するタイプです。
  • 統合型
    豊富な情報を自分の中で体系的に整理し、じっくり熟考した上で決断するタイプです。決断型の真逆で、短期間の圧力や「早く決めてください」というクロージングは逆効果になります。オワハラ(就活終われハラスメント)のような対応を受ければ、即座に離脱します。このタイプに必要なのは、「待つ力」です。多面的な情報提供を継続的に行いながら、候補者のペースで判断を促すことが重要です。事業の詳細資料、研究開発の方向性、先輩社員のキャリア実例などを段階的に提供し、納得感を深める支援を行うことが大切です。焦らせず、定期的に軽い接点を持ちながら「安心して選べる環境」を整える姿勢こそが統合型の心を動かす方法です。

このような意思決定スタイルを把握し、候補者が感じているネックを丁寧に解消していきましょう。

また、チーム内で候補者情報を共有し、誰がどの候補者にどんなフォローを行ったのかを一元管理できているかも重要です。個別対応が属人的になると、フォロー漏れや重複対応が発生しやすくなります。意向度・他社状況・フォロー履歴を共有し、組織的な内定承諾フォローを実施しましょう。以下の2つのExcelテンプレートを使うことで、簡単に個別フォローのPDCAとチーム内共有を行うことができます。

<フォローカルテ>
就職活動の候補者フォロー(内定承諾のための意欲醸成)において、候補者にヒアリングを行う際に使用するExcelです。候補者一人ひとりの活動状態、心理状態を細かく把握することで、どんな情報を提供すべきかを検討しましょう。

<フォローヨミ&アクション管理シート>
フォロー(内定承諾のための意欲醸成)段階にいる候補者の状況を一覧で整理するExcelです。チーム内でフォローをする候補者の優先順位をつける際にご活用ください。

採用課題と解決策:落としてしまっている編

選考プロセスの中で、実は「落としすぎている」こと自体が課題となっているケースもあります。母集団が集まり、辞退もそこまで多くないにもかかわらず、最終的な内定数が伸びない背景には、評価基準や面接設計の歪みが潜んでいることが多いのです。

どこからが「落としすぎ」なのか

採用プロセスでは、「どの段階でどれくらい落とすのが適正なのか」を把握しておくことが重要です。基準が明確でないと、本来合格させるべき候補者まで取りこぼしてしまい、採用成功の確率が大きく下がります。以下は、一般的に目安とされている通過率の範囲です。

  • 内定率(最終合格)
    ・マス広報(広告媒体や大規模イベント経由)…約1〜数%
    ・リクルーター・OB紹介などのネットワーク系…約10%前後
    ※接点の質によって大きく変動します。
  • 書類通過率
    一般的…80%程度(下位2割を不合格)
    厳しめ…20%程度(上位2割のみ通過)
    ※厳選型か、まず会う方針かで大きく異なります。
  • 筆記試験通過率
    厳しい企業…約10%
    会う姿勢を重視する企業…約50%
    ※試験の難易度に比例して大きく変動します。
  • 適性検査の合格率
    企業による調整幅が最も大きい領域となり、10〜50%程度と各社様々です。
  • 面接通過率
    通常の個人面接…30〜40%程度
    グループ面接…約50%(1回あたり4〜5人が一般的)
    ※10〜20%前後しか通過していない場合は落としすぎの可能性があります。

もし通過率が上記目安を大きく下回っている場合は、評価基準の厳しさや面接官の判断傾向そのものを見直すサインかもしれません。どの段階で過度に落としているのかを把握し、採用プロセスの改善につなげていくことが重要です。

「落とすほうがラク」になってしまっている

上記のように「落としすぎ」のラインを知っていたとしても、採用現場では、候補者を「合格」にするよりも「不合格」にするほうが心理的にも実務的にもラクになりやすい傾向があります。合格させた場合は、次の面接官に対して評価理由を説明する責任が生じますが、不合格には説明がほとんど求められないため、判断が守りに傾きやすくなります。特に中間層の面接官ほど「合格=リスク」「不合格=安全」と捉えやすく、明確な評価ポイントがある人ばかりを通し、少しでも不確実性を感じる候補者は落としてしまう構造が生まれます。

しかし、この安全志向ではどの企業も似たような人材を狙うレッドオーシャンに陥ります。そのため、「完璧ではないが、伸びしろのある人」を拾い上げる視点が重要です。高い採用力を持つ企業ほど、「根拠は薄くても将来性を感じる人」を合格させる判断ができています。入社後に大きく成長する人材の中には、選考時点で強みが見え切っていない場合も多く、表面的なスキルでは測れない「潜在能力」や「変化対応力」を見抜けるかが採用の質を左右します。

そのためには、「不確実な合格」を許容できる心理的安全性や、面接官同士が評価理由や違和感を率直に共有できる文化が必要です。また、候補者を「評価する」だけでなく、行動特性や思考傾向から将来の伸びしろを推定する「見極め」の視点を持つことも重要です。企業の採用力とは、明確な答えのある候補者を選ぶこと以上に、「未知の原石」を見抜けるかどうかにかかっています。

評価基準がズレている

採用の現場では、同じ企業の中でも面接官によって評価基準が異なるケースが多々あります。たとえば評価基準に「コミュニケーション能力が高い」という項目があったとしても、それを「論理的に説明できること」と捉える面接官もいれば、「元気に明るく受け答えできること」と捉える面接官もいます。こうしたズレによって、面接官Aでは不合格だった候補者が、面接官Bでは合格になるといった結果の不一致が生まれます。また、面接官がもつバイアスにも注意が必要です。人は自分に似た人を好ましく感じる「類似性バイアス」を持っており、自分とは違う雰囲気や価値観だから、という理由で不合格にしてしまうことも実際によくあります。

こうしたズレを解消するには、まず評価基準の明文化と共有が欠かせません。評価項目を「スキル」「志向」「スタンス」「カルチャーフィット」などに分解し、それぞれの定義と判断基準を共通言語化しましょう。「コミュニケーション能力」という大きな枠だけでなく、どのようなコミュニケーション能力を指すのかまで明確にしておくことが大切です。また、評価の根拠を印象ではなく「事実(エピソード)」で記載するよう促すことで、感覚的な合否判断を減らせます。

さらに、面接官に対しては、選考意図や候補者情報の事前提供も重要です。募集背景、重視したいポイント、今回のポジションの期待値などを理解していないと、面接官は自分の基準で判断してしまいます。意図を共有しておくことで、評価のズレは大きく抑えられます。

加えて、過去の合格率・不合格率の目安を共有することも効果的です。「一次面接では30〜40%が通過している」「ここ数ヶ月は通過率が20%を切っている」など、客観データを示すだけで、面接官は自分の判断が厳しすぎるのか適正なのかを把握できます。合格率の基準を共有することで、必要以上に落としてしまう「守りの判断」を防ぐことにもつながります。

複数の面接官が関わる場合は、「前段の面接官が何を評価して合格としたのか」を共有するプロセスを組み込むことが有効です。これにより、面接官同士の不信感や責任の押し付け合いを防ぎ、組織として一貫性のある採用判断が行えるようになります。

採用課題と解決策:定着しない編

採用がうまくいっても、「入社後に辞めてしまう」状態が続けば、採用活動そのものの効果は薄れてしまいます。近年は、入社後1年以内の離職率が20〜30%に達する企業も珍しくありません。採用して終わりではなく、入社後までモニタリングを続けましょう。

配置・配属

入社後すぐに離職が発生するケースの多くは、仕事内容や職場環境とのミスマッチが要因です。「思っていた業務と違った」「職場に馴染めない」「教育担当が忙しくて放置された」といった声は珍しくありません。採用時点でどれほど良い印象を持っても、配属先での最初の体験が悪ければ、心理的離脱はすぐに起こります。

まず重要なのは、受け入れ側の準備です。採用担当から現場へバトンが渡るタイミングで、期待や目的が曖昧なまま新人が配属されてしまうと、現場では「なぜこの人が来たのか」が分からず、関係構築が遅れます。配属前には、現場リーダー・教育担当に候補者情報(選考での評価ポイント、適性、懸念点)を共有し、迎え入れる意識を醸成することが大切です。

さらに、早期の配置転換制度も有効です。「合わなかったら終わり」ではなく、「試してみて、より適した場所を探す」という考え方を制度として認めることで、本人のモチベーション維持と成長機会を両立できます。定着の鍵は、「入社=ゴール」ではなく、「入社後の配置・配属からがスタート」という視点を全社で共有することにあります。

評価・処遇

次に重要なのが、評価の透明性とキャリアの見通しです。人事評価への不信感や処遇への不満は、モチベーションを下げるだけでなく、転職を検討する直接の引き金になります。

特に、努力しても評価に反映されない・上司によって評価基準が異なると感じる環境では、社員の信頼は急速に失われます。

まず取り組むべきは、評価基準の明確化と統一です。「上司によって見るポイントが違う」という状態を放置すれば、努力よりも「誰に当たるか」で結果が変わる不公平な組織になります。評価項目と定義を可視化し、評価者研修で判断の一貫性を保つことが必要です。

また、社員が将来を描けるキャリアパスの提示も欠かせません。「何を達成すれば次のステップに進めるのか」「どんなキャリア選択肢があるのか」が見えなければ、人は長く留まる理由を失います。昇進・専門職ルート・兼務・ジョブローテーションなど、個人の価値観に合わせた複線的キャリア設計を示すことで、定着率は大きく改善します。

さらに、成果や長期勤続を目に見える形で報いる仕組み(手当・表彰・報奨休暇など)も、心理的報酬として有効です。

教育・能力開発

最後に、定着を左右する最大の要素が「成長実感」です。多くの離職者は、「自分が成長していない」「何も学べない」と感じた瞬間に、退職を決意します。そのため、教育体制の整備は採用後フォローの中心課題です。

まずは、新人研修の設計から見直します。「OJT任せ」「現場で覚えてもらう」という放任型では、早期離職を招きます。入社初期の1〜3カ月で「自分は必要とされている」「この会社でやっていけそうだ」と感じてもらうための、体系的なオンボーディングが不可欠です。

次に、自己成長を支援する仕組みを整えましょう。資格取得支援や外部研修、社内勉強会などを通じて、社員が自分の成長を実感できる環境を用意します。この「会社が自分を育ててくれている」という感覚が、エンゲージメントと定着を強く結びつけます。

さらに、教育を「全社員共通の文化」として根づかせることも重要です。学び続ける姿勢を評価項目に組み込み、上司が部下の成長を支援する行動を称賛する文化をつくることで、「学び=組織の価値」という意識が広がります。

採用課題の発見&解決に役立つ考え方、コツ

採用課題を正しく発見し、効果的に解決していくためには、個別のテクニックだけでなく「考え方の型」を持つことが重要です。採用は企業規模や業界、求める人材によって状況が大きく変わるため、場当たり的に対策を打つと効果が出にくくなります。まずは課題の構造を整理し、どこに注力すべきかを見極めるための視点を持つことが成功への近道です。

企業タイプ別 課題と選考プロセス設計方針例

これまでどのような課題があるか紹介をしてきましたが、実際のところ企業規模やタイプによってその課題は全く変わってきます。ここでは、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』より企業のタイプによる課題とその選考プロセス設計方針例を4つ紹介します。

A:採用人数が少ないため、できるだけ効率的に採用活動を行いたい企業

【採用課題】

  • エントリー数が採用人数に比して多いので、効率的に優秀層を絞り込みたい
  • あまり不合格者をだしたくない。本気の応募者のみに受験いてほしい

【選考プロセス設計の方針】

  • 説明会は実施しないか(採用ホームページや動画配信などで代用)、大規模のものを少数回実施して自社の負担を最小限にする
  • 本気度の高い応募者を絞り込むため、エントリーシートは重めの課題を設定する、説明会に参加することを応募資格にするなど、高いハードルを用意する
  • 選考プロセスは、1ステップごとに全応募者が終了してから次のステップに進める。全応募者を見た上で、優秀層から合格を出せるような体制にしておく(五月雨式に選考を進めていくと、初期の応募者と後期の応募者を比較できず、選考基準にブレが生じる可能性がある)

B:採用目標人数に比してエントリー数が少なく、候補者集団形成に苦心している企業

【採用課題】

  • できるだけ少ない人数や期間で採用活動を行いたい

【選考プロセス設計の方針】

  • 少ないエントリー数でも受験者数が多くなるように、エントリーシートや説明会参加義務などのハードルは極力低くする
  • 電話アポイントによる呼び込み等を工夫して、少ないエントリー数でも受験率を高める
  • 大学のキャリアセンター経由やOB訪問など、多くの応募・接触チャネルを用意する
  • 大手や人気企業の採用ハイシーズン直後から本格的に採用を開始する。一方で、通年採用など、採用窓口はつねに開けておき、採用候補者が 現れたら柔軟に対応する

C:採用目標人数に比してエントリー数が多く、優秀層を見つけ出すのに苦心している企業

【採用課題】

  • 大勢の応募者への対応を効率化する
  • 優秀層を早期に的確に見つけてフォローする

【選考プロセス設計の方針】

  • 説明会は大規模会場で実施することで、回数を少なくし、採用側の負荷を下げる
  • 受験者の合格基準は厳しめに設定し、後工程の選考負荷を下げる
  • 面接などの選考は、特に初期は一気に対応して選考期間が伸びないようにする(伸びると優秀層から辞退していく)。面接官や面接会場などを早期に確保しておく
  • 発見した優秀層向けに飛び級的選考プロセスを用意して、スピードアップできるようにする

D:採用目標人数に比してエントリー数が少なく、候補者集団形成に苦心している企業

【採用課題】

  • エントリー者や受験者を増やす
  • 途中辞退者を減らす

【選考プロセス設計の方針】

  • 説明会を多数回実施し、学生が参加しやすいようにする。説明会参加は義務とせず、参加しない候補者にも選考参加の権利を与える(説明会に参加しなくても応募してくれる自社のファンを除外する必要はない)
  • エントリーシートなど、候補者の応募不可を上げるものはなくすか、軽くする
  • 適性検査の合格基準を緩めにして、できるだけ多く候補者と面接する(社員と学生が直接会うこと自体がPRになる)
  • 早期受験者は早めに選考プロセスを進めて、待たせない。全応募者の選考結果が出そろってから次のプロセスを実施するのではなく、五月雨式・同時並行的に複数の候補者の選考プロセスを進める体制を取る

ロジックツリー

採用活動では、応募数や承諾率などの結果指標だけを見ても、どこに問題があるのかが分からないことが多くあります。そうしたときに有効なのが「ロジックツリー」です。ロジックツリーは、課題を因果関係に沿って分解し、原因の「広がり」と「深さ」を同時に押さえることで、的を外さずに打ち手を導くための思考整理の手法です。

まず、課題の原因を特定するために「なぜ?」(WHY?)を繰り返し、構造的に分解していきます。ここで重要なのは、思いつきで理由を挙げるのではなく、できるだけ漏れやダブりがないように整理すること(MECEの原則)です。また、判断がつかない要素は「その他」として一旦保留し、後から検証できるようにしておくと、分析の精度が上がります。

原因を特定したあとは、「ではどうするか?」(SO HOW?)を繰り返し、具体的な解決策に落とし込みます。抽象的なスローガンではなく、誰が・いつ・どのように実行できるのかを明確にすることが大切です。原因と解決策が因果関係でつながっているかを常に確認しながら、枝が分かれるほど具体的な行動レベルにしていくのがポイントです。

たとえば「採用目標に届かない」という課題を考えてみます。まずは大きく3つに分けることで、全体構造が整理されます。


今回はあくまでも例なので、内容は荒いものになっていますがこの段階で、どの工程にボトルネックがあるのかが見えてきます。例えば「集まっていない」の中でも、「ターゲット層への訴求が弱い」が主因だと分かったとします。ここからSO HOWを繰り返し、現場で実行できる施策に具体化します。

こうしてWHYで原因の構造を深掘りし、SO HOWで解決策を具体化していくと、「なぜ今その施策を行うのか」「それがどの課題に紐づいているのか」が明確になります。結果として、思いつきではなく、論理的に裏付けられた打ち手を現場レベルで実行できるようになります。ロジックツリーを使うと、採用課題の全体像を俯瞰しながら、的を外さずに行動に落とし込むことができます。「集まっていない」「逃げられている」「落としすぎている」という3つの切り口で整理するだけでも、課題の所在と優先順位がはっきりし、限られたリソースを最も効果的な施策に集中させることが可能になります。

PDCA

採用活動において成果を左右するのは、「どこで」「どのくらいのスパンで」PDCAを回せるかです。採用は年間を通じて行う一大プロジェクトでありながら、日々の状況変化に対応する即応性も求められるため、複数のスパンでサイクルを重ねる必要があります。

まず、新卒採用全体としては、1年を通したPDCAが経営層への報告や方針決定の基礎となります。年度初めに採用目標やチャネル戦略を立て、シーズン終了後に全体を総括する流れです。ただし、これだけでは変化の速い採用市場に追いつけません。実務の現場では、月次や週次でサイクルを回し、計画を細かく調整していくことが欠かせません。

<例①母集団形成の段階>
PDCAを回す場所:スカウトメディア
PDCAを回す単位:1週単位
具体的に確認するもの:送信対象・文面・媒体の使い方を管理し、媒体ごと、文面ごとの送付数、開封率、承諾率を見ます。スカウトを送ってから1週間もあれば、開封率や返信率などの初期反応が数値で見えてきます。週ごとに数値を比較しながら、打ち手を小刻みに修正していくことで、母集団の質と量を最適化できます。

<例②選考フェーズ>
PDCAを回す場所:各面接の通過率や辞退率
PDCAを回す単位:2週間〜1か月単位
具体的に確認するもの:面接官の評価傾向や学生の温度感を通過率や辞退率とあわせて分析します。特に「一次面接後の辞退が多い」などの傾向が見られた場合は、すぐに面接官トレーニングや説明内容の改善に着手するのが理想です。ここでも翌月まで待つのではなく、翌週に修正ができるスピード感が鍵になります。

<例③クロージング領域>
PDCAを回す場所:候補者ごとのフォローや意思決定支援
PDCAを回す単位:1週単位
具体的に確認するもの:「どの候補者が迷っているのか」「どの情報提供が効果的だったのか」を確認し、行動計画を更新していきます。社内で情報共有をし、候補者の状況がどのように変化しているか把握したうえで次のアクションを定めましょう。

採用におけるPDCAは「年単位では方針を定め、月単位で状況を分析し、週単位で行動を修正する」という多層構造で設計することが効果的です。年次の報告や反省にとどまらず、週ごとに小さな仮説検証を積み重ねることが、結果的に採用全体の質を引き上げ、再現性の高い成功パターンを生み出すことにつながります。

以下のExcelシートでは、採用活動の全体を管理し、PDCAを回す場所を把握するのに有効です。

<採用管理表>
応募のあった候補者の状況を管理するExcelです。応募段階から書類選考、面接を経て内定承諾するまでの一連の流れを一覧で表示することができます。

チェックリストから自社の課題にアタリをつける

採用活動の改善ポイントは、複雑な施策や新しいツールの導入だけではなく、「当たり前のプロセスを丁寧に整えること」で大きく変わる場合があります。そのために有効なのが、見落としがちなポイントを体系的に確認するチェックリストです。

ここでは、志望度の低い人を意図せず排除しないための視点と、面接フォローを成功させるための具体的な工夫を、例として整理しています。

志望度の低い人を排除しないためのチェックリスト

  • エントリーシートは本当に必要か
  • 履歴書はいつから提出が必要か
  • 説明会と選考を関連づけていないか
  • 一度に対応する人数は何がボトルネックか(面接官/呼び込み/会議室)
  • エントリー者を無為に放置していないか
  • 「面接予約画面」の導線に問題はないか
  • 必要に応じて電話での呼び込みが行えているか
  • フォローとジャッジに必要なマンパワーは適切に配分されているか


面接フォローを成功させるためのチェックリスト

  • 最終面接前にフォロー担当を付け、候補者と“一緒に内定を目指す”関係性を構築しているか
  • フォロー担当者には、候補者との相性が良い「類似タイプ」の社員をアサインしているか(相補関係の場合、関係構築に時間がかかる点に注意)
  • 適性検査などを活用し、候補者と面接官のタイプを意図的に組み合わせているか(ただし類似タイプはジャッジが甘くなる可能性に注意)
  • 自社のアピールポイントを理解したうえで、タイプ別の訴求ポイントに基づくトークパターンを事前に用意しているか(採用競合との差別化ポイントも共有・訓練しているか)
  • できるだけ高頻度で候補者と接触し、担当者と候補者の間に深い関係性を築けているか(接触機会の多さは好意形成につながる)
  • 新聞・雑誌・書籍などのパブリシティを収集し、適切なタイミングで候補者へ提供しているか(保護者など影響力の大きい第三者からの後押しを期待できる)

リソース不足はRPOを利用する

採用活動では、母集団形成・面接調整・候補者フォローなど、実務量が想定以上に膨らみ、人事部門だけでは十分に手が回らなくなるケースが少なくありません。こうした「一時的なリソース不足」には、RPO(Recruitment Process Outsourcing)の活用が有効です。負荷の大きいオペレーション部分を外部に委託することで、人事担当者はコア業務である戦略設計や候補者体験の改善に集中できます。

最近では、企業規模に合わせて必要な範囲だけ切り出せるRPOも増えており、「面接調整だけ」「候補者へのフォローだけ」といったスポット利用も可能です。

弊社でも、採用フローに合わせて柔軟に伴走するRPOサービスをご提供していますので、ご関心があればお気軽にご相談ください。

リファラル採用、アルムナイ採用という選択肢も視野に入れる

リファラル採用やアルムナイ採用も、近年の人材確保の新しい手法として注目されています。どちらも「信頼関係を基盤とした採用」という新たなチャネルを活用する点が特徴です。

リファラル採用とは

社員からの紹介を通じて候補者を募る仕組みです。企業文化を理解している社員が紹介することで、組織との相性が良い人材に出会える確率が高く、採用後の定着率が高い傾向にあります。また、採用コストが比較的低く、スピーディーに選考を進められる利点もあります。ただし、紹介を促すためには「誰をどんな基準で紹介してほしいか」を明確にし、社員が動きやすい仕組みを設計することが欠かせません。単に「紹介してください」と声をかけるだけでは制度が形骸化しやすく、紹介時のインセンティブ設計や、紹介者・被紹介者の心理的ハードルを下げる運用設計が成果を左右します。

アルムナイ採用とは

過去に自社で働いていた元社員を再び迎え入れる仕組みです。退職理由の多くはキャリアアップや家庭の事情などであり、必ずしも会社への不満による離職ではありません。そのため、再入社によって「即戦力かつカルチャーフィットの高い人材」を確保できる可能性があります。海外では一般的ですが、日本企業でも近年、同窓会制度やアルムナイネットワークを整備する動きが増えています。ただし、法的・制度的な制約は特にないものの、再入社後の評価・処遇の設計や、在籍社員との公平感の担保には注意が必要です。

これらの手法は、単なる「代替の採用チャネル」ではなく、企業文化をベースに人との関係性を長期的に育む戦略的採用といえます。採用広報や社員体験(Employee Experience)と一体で考えることで、社員・退職者・候補者の間に「つながり続けるブランド」を形成できます。すぐに大規模運用を行うのは難しくとも、社員紹介キャンペーンやアルムナイの情報発信イベントなど、小さく始めて継続的に関係を築いていくことが、持続的な採用力の強化につながります。

まとめ:感覚的な採用から再現性のある採用に

採用課題の特定方法と多岐にわたる採用課題例に対する対策について解説いたしました。課題特定には、数値に基づく「定量分析」だけでなく、現場の温度感や候補者心理といった「定性情報」の掛け合わせが不可欠です。本記事の内容が、貴社の採用活動における課題解決の一助となれば幸いです。

もし「自社だけでは分析しきれない」「プロの視点で戦略を見直したい」とお考えでしたら、ぜひ弊社の採用コンサルティングをご活用ください。貴社に最適な解決策をご提案いたします。

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