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公開:2026.02.25 最終更新:2026.02.25

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内定辞退率を下げるには?|構造・心理から読み解く原因と防止策

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売り手市場が続く新卒採用では、内定辞退率の高さが多くの企業にとって大きな課題となっています。内定は出して終わりではなく、選考前後の関わり方や情報提供の工夫によって、承諾率は大きく左右されます。本記事では、内定辞退が生まれる要因をひも解きながら、心理学の知見も踏まえ、辞退を抑えるための具体的なポイントを解説します。

内定辞退率とは

内定辞退率とは、企業から内定通知を受け取った候補者のうち、自己都合で入社を辞退した人の割合を示します。内定通知後、承諾前に辞退の連絡があった人、一度内定を承諾した後に辞退連絡があった人が該当し、選考中の辞退や企業からの内定取り消しは数に含まれません。

内定辞退率の計算方法

内定辞退率 = ( 内定辞退者数 ÷ 内定通知を出した総数 ) × 100
※分母を「内定承諾者数+辞退者数」とする場合もありますが、一般的には「発行した内定通知の総数」に対する辞退の割合を見ます。

内定辞退率の平均と推移

内定辞退率の振り返りをする際には、自社の事例だけでなく、市場の平均値や年ごとの推移を把握することも欠かせません。ここでは、新卒採用市場における内定辞退率の推移を見ていきます。

新卒採用における全体の推移

株式会社インディードリクルートパートナーズの「就職プロセス調査」(※1)によれば、最新2025年卒(3月卒業時点)の内定辞退率は63.8%となっています。ここ5年の推移は、以下の通りです。全企業平均は約60%が相場になっています。

〈3月卒業時点の内定辞退率の推移〉

2021年卒 57.5%
2022年卒 61.1%
2023年卒 65.8%
2024年卒 63.6%
2025年卒 63.8%

新卒採用における企業規模別の内定辞退数

株式会社リクルートの「就職白書」(※2)によると、企業規模別の内定辞退数は以下の通りです。25卒では1000~4999人規模が増加、他は横ばい~減少しています。

企業規模2024年卒内定辞退数平均2025年卒内定辞退数平均
300人未満3.53.6
300~999人14.612.9
1000~4999人36.842.2
5000人以上96.091.4

中途採用における内定・選考辞退率の実態

エン・ジャパン株式会社が2024年に実施した調査(※3)によると、直近1年以内に中途採用を実施した企業の85%が「辞退が発生した」と回答しています。さらに、45%の企業が「以前よりも辞退の発生数が増えた」と実感しており、従業員規模1,000名以上の大手企業に限定するとその割合は56%にまで跳ね上がります。規模の大小を問わず、優秀な中途人材の獲得競争が激化していることがわかります。

辞退のタイミングとしては、内定出し後の辞退はもちろんですが、書類選考通過後の「面接前の辞退(60%)」や、「面接前日・当日のドタキャン辞退(52%)」が非常に高い割合を占めており、新卒採用だけではなく中途採用においても内定や選考の辞退は増加傾向にあり、多くの人事を悩ませる課題の一つです。

内定辞退率が低すぎる場合のリスク

市場データを踏まえると、新卒は内定辞退率60%前後が平均的です。ただし、内定辞退率は低ければ低いほど良い指標というわけではありません。極端に低い内定辞退率は、自社に元々興味を持っている候補者に限定した採用(=ファン採用)に陥っている可能性があります。

一般的に、優秀な候補者ほど多くの企業から内定を得ており、いわば「引く手あまた」の状態です。その結果、他社を選ぶ(=自社の内定を辞退する)可能性も自然と高くなります。つまり、極端に低い内定辞退率は、こうした他社と競合するような優秀な人材層にそもそもアプローチできていない、あるいは魅力付けができていない可能性を示唆しています。したがって、内定辞退率はあくまで一つの目安として活用し、その数値自体にこだわり過ぎないようにしましょう。

内定辞退率が高まる要因

内定辞退の要因は、主に「プロセス」「コミュニケーション」「スタンス」の3つの側面に分類されます。

採用プロセス(仕組み)に関する要因

内定辞退率が高まる1つ目の要因として、内定出しまでのプロセスに課題があり、候補者が離脱している可能性が考えられます。。

選考スピードの遅さ

選考が長引くほど候補者のモチベーションは低下し、他社に流れやすくなります。目安として、応募から2〜3週間以内に内定可否を確定できるプロセス設計が望ましいとされます。

内定通知タイミングの「ズレ」

内定を出すタイミングを誤ると、候補者の意思決定スタイルと噛み合わず、内定辞退の原因になりえます。たとえば、熟考型(よく考えてから結論を出す)候補者に対して即答を迫ると「十分に検討させてもらえない」と受け取られ、逆に即断型(スピーディーに結論を出す)の候補者に内定通知を先送りすると「自分は優先度が低い」と感じさせ、他社に流れやすくなります。さらに、他社オファーの承諾期限や家庭・転居の事情を踏まえずに内定と回答期限を設定すると、「自分の状況が考慮されていない」と映り、志望度が下がる可能性があります。

コミュニケーション(情報・対話)に関する要因

内定辞退率が高まる2つ目の要因として、適切なタイミングで適切な情報を提供できておらず、候補者が離脱している可能性が考えられます。具体的には以下の通りです。

連絡頻度の不足

連絡頻度が低いほど、候補者は「放置されている」と感じてしまいます。 本来、人は接触回数が多いほど相手に好感を抱きやすい「単純接触効果」が働きますが、連絡が少ない環境ではこの効果が生まれないため、定期的に連絡をとる必要があります。

志向性に合わせた情報提供の不足

人は自分の決め方や志向性(熟考型/即断型など)に合った量や内容で情報が届かないと、不安が残ります。 さらに、候補者が重視するポイントや不安解消のための情報が欠けていると、他社と比べて見劣りすると受け取られやすくなります。

また、候補者の不安は自分からはなかなか言い出しにくいものです。不安をそのままにしておくと、辞退する可能性があります。まずは不安を打ち明けてもらえるような信頼関係を築き、一つ一つ丁寧に解消できれば、内定辞退のリスク軽減につながります。

自己開示不足

採用担当者が自分や組織のこと(価値観・働き方・強み弱み・失敗からの学び等)を先に伝えないと、候補者も自己開示ができず「本音を話して大丈夫かな」「この人は自分を理解してくれるだろうか」と懸念を感じた状態が続き、自身の不安を吐露できず、意思決定が進みにくくなります。

採用関与者のスタンス(印象)に関する要因

面接担当者や現場社員の印象の悪さ

面接担当者や現場社員の立ち振る舞いによって悪印象を与えると、職場への安心感や期待値が下がり、内定辞退に繋がる恐れがあります。

他社批判による信頼低下

面接担当者が競合他社を貶め、弱点をあげつらって自社の優位性を主張すると、候補者は「他社を悪く言う人は信頼できない」と感じ、企業への好感・信頼が低下します。

内定辞退率を下げる3つのポイント

自社に入社してほしい人の入社意思を固め、可能な限り内定辞退率を抑制するためには3つのポイントがあります。

ポイント1:選考プロセスの最適化

内定辞退率を下げるポイント1つ目は選考プロセスの最適化です。なるべく候補者に合わせた選考プロセスになっているか、確認しましょう。

選考スピードの向上

選考が遅くなると、志望度の高い候補者であっても「自分は大切にされていないのではないか」「自分は評価が低く、必要とされていないのではないか」と受け取り、志望度が下がってしまう恐れがあります。特に合否判断や日程調整の連絡に時間がかかるほど、そのような不安は高まりやすくなります。通常は応募から2〜3週間で内定まで進めるのが理想です。工数が不足してスピードの確保が難しい場合は、採用アウトソーシング(RPO)の活用や、評価の高い候補者を優先して選考を進めるなどの工夫により、できるだけ速やかに内定まで進められる運用を考えましょう。

選考負荷の軽減

選考中の負荷が高いほど、次のステップに進みたいと思う気持ちが弱まり、離脱を招く可能性があります。たとえば、遠方の候補者には初回をオンライン面接にする、提出書類を簡素化する、合否判断に必要十分な情報がある場合は必須イベントや適性検査をスキップ/後ろ倒しにするなど、候補者の心理や評価の高さに応じて運用を最適化します。こうした取り組みは、「候補者思いで柔軟な企業」という好印象につながり、意欲醸成にも寄与します。

最終面接合格と内定通知の使い分け

従来、最終面接の結果は「合格=内定」「不合格=終了」という二者択一で扱われがちです。しかしこの運用では、候補者の最新の意思や状況の変化を見落としやすくなります。その結果、候補者にとっては「内定=その会社への就職活動の終了」と受け取られ、他社選考に注力する状態に移ってしまうことも少なくありません。そのため、内定を出した後に企業側が追加の情報提供や面談を行おうとしても、候補者が応じてくれないケースが生じます。こうした事態を防ぐためには、最終面接合格はあくまで選考基準をクリアした状態として位置づけ、内定提示とは明確に切り離すという選択肢もあります。具体的には、最終面接で合格水準に達している候補者に対してはまず「最終面接合格」として通知し、その後は企業側が情報提供や対話を重ねながら、候補者の意思が固まったタイミングで「内定通知」を行う流れも検討してみてはいかがでしょうか。

接触頻度の増加と単純接触効果

通常の面接だけでは、候補者が質問できる時間は短く、企業側も評価に集中するあまり、自社の魅力発信が手薄になりがちです。その結果、候補者が企業のポジティブな情報を十分に得られず、入社意向が高まりにくいことがあります。 また、最終合格通知後に初めて魅力の訴求をすると、手遅れで他社に流れてしまう可能性があります。

したがって、最終合格後ではなく、計画的に接点を設計し、採用担当者が候補者の志望度を伴走しながら高めることが理想的です。さらに人間の認知特性として単純接触効果(繰り返し接すると印象や好感度が高まる)があるため、定期的な接触は好意・信頼の形成につながり、入社意欲の醸成のポイントになります。

ポイント2:候補者理解と戦略的コミュニケーション

内定辞退率を下げるうえでの2つ目のポイントは、戦略的なフォロー方針の設計です。候補者の心理を捉えない場当たり的なフォローは逆効果になります。以下の観点を押さえて計画的に進めましょう。

候補者の心理・活動状況の把握

まずは候補者の心理や活動状況を押さえましょう。多くの候補者は複数社を並行受検しており、自分にとって良いと思う会社から先に内定が出れば、そこで活動を終了し、他社を辞退してしまいます。そのため、次の点を事前にヒアリングし、必要に応じて自社の面接スケジュールを前倒しするなど柔軟に調整する必要があります。

  • 自社以外の最終面接合格企業(承諾期限/交渉可否/交渉後期限/意向度)
  • 自社以外の選考中企業(次回選考内容/次回日時/残選考/意向度)
  • 就職活動の軸と決め手

このように競合企業と本人の軸・決め手を把握しておくと、候補者が価値を感じやすい情報提供がしやすくなります。

候補者の入社意欲を高める「4つの動機」

就活状況の把握に加えて、候補者が「意欲を高める要因=モチベーションリソース(やる気の源泉)」も押さえましょう。採用場面で使われる代表的な4分類は「組織型」「仕事型」「職場型」「生活型」です。複数が当てはまることが多いため、どれが相対的に強いかの観点で把握します。見極め方は、 4タイプを提示して自己評価してもらうことと、 過去の経験を振り返り「どのような状況でやる気が高まったか」を質問することで明らかにします。その後タイプ別に刺さる訴求を行いましょう。

■4つのタイプと効果的な訴求

①組織型
所属する組織の社会的ステータスや成長性・安定性が動機になるタイプ
→受賞歴(例:「働きがいのある会社」等)やメディア掲載、事業の社会的意義、成長・昇進の実績を事実で提示。

②仕事型
仕事そのものの目的・プロセス・成果からやりがいを感じるタイプ
→実際の企画書・成果物の共有、職場見学やインターンでの疑似体験、業務の目的とインパクトの説明。

③職場型
「誰と働くか」(上司・同僚・チーム文化)を重視するタイプ
→相性の良さそうな社員との面談機会を複数設定。社内イベントへの招待や1日の仕事同行などで人・文化を可視化。

④生活型
ワークライフバランスや、家族との時間など生活全体の充実を重視するタイプ
→報酬水準のレベルやワークライフバランスの充実度を具体的に説明。

このほか、候補者が働くうえで重視する価値観や「やりたいこと(will)」、キャリア観も事前にヒアリングし、把握した内容を踏まえて適切な情報提供ができるよう準備します。

候補者にとって不安要因(ネック)の把握と解消

プラス要因の訴求と同じくらい不安要因(ネック)の把握と解消は不可欠です。自社に対する不安が残る限り承諾には至りにくいため、面談では「何に不安を感じているか」を必ずヒアリングします。洗い出した不安は、それが「事実」か「誤解(事実ではない)」かで切り分け、以下3パターンで対応方針を定めます。例として「残業が多いのではないか」という例を取り上げ、不安を解消するためのカウンタートークをご紹介します。

不安要因に対するカウンタートーク

パターン1:事実であり、改善予定がある場合

  • 対応: 課題の認識と、具体的な改善策をセットで伝える。
  • トーク例: 「現在は月45時間程度ですが、人員増員と業務委託により削減を進めています」

パターン2:事実であり、改善予定がない場合

  • 対応: その環境だからこそ得られる「別のメリット(トレードオフ)」を提示する。
  • トーク例: 「月45時間程度の残業は発生しますが、その分裁量が大きく、業界水準より高い報酬と早い成長機会をお約束します」

パターン3:事実ではない(誤解・噂)場合

  • 対応: 具体的なデータや事実を用いて、誤解を解く。
  • トーク例: 「過去はそのような時期もありましたが、現在は21時PCシャットダウンを導入し、月平均20時間以内に収まっています」

タイミングや候補者の志向性を考慮した内定出し

候補者に内定を出すタイミングは、候補者の入社意思が固まってからが理想的です。なぜなら、内定を提示した瞬間に企業は“選ぶ側”から“選ばれる側”へと立場が反転するためです。立場が反転すると、比較検討が長期化し、「より良い条件があるかもしれない」という探索行動が強まり、交渉余地が薄まります。たとえ優秀な相手でも、安易に内定を出しては、相手から軽く見られて、かえって入社意欲を低める原因にもなりえるため工夫が必要です。

あわせて重要なのが、一人ひとりに合わせてオーダーメイド方式で内定を出すことです。人は意思決定の際の考え方が異なり、一般的に次の2軸①必要とする情報量(多い/少ない)、②選択肢の量(1つに絞る/多く残す)の4タイプに分類できます。採用担当者は、候補者の意思決定スタイルに応じて、入社意思を固めてもらうまでのアプローチを変えるようにしましょう。

意思決定スタイル分類と対策

意思決定スタイルの詳細とアプローチ方法をご紹介します。

①論理型
タイプ詳細:「多くの情報を得た上で理論的に分析して、きっちりと1つの答えを出す」タイプで、筋の通っていないことや矛盾を嫌います。
アプローチ方法:見せたい情報をあらかじめ考え抜き、相手にとって矛盾のないストーリーを作れるように準備してから入社の意思を尋ねる必要があります。

②統合型
タイプ詳細:「様々な可能性を吟味した上で答えを出す」タイプです。そのため、なかなかすぐには意思決定を下しません。
アプローチ方法:とにかく「待つこと」が必要となります。これは決して放置しろというのではなく、継続的に接点を持って、様子を見ながら自社の情報を伝えつつ、相手の決断を待ちます。急ぎで意思決定を迫れば、「この人は自分を騙そうとしているのではないか」と考え、かえって意欲が下がる可能性があります。

③決断型
タイプ詳細:与えられた情報が少なくても「パッと見て、パッと決める」タイプです。
アプローチ方法:自社に興味を持ってくれたら、あとは押しの一手が必要です。妙な駆け引きなどはせずに、「我々は君と一緒に仕事がしたい」、「うちに決めてほしい」と伝えることで、タイミングさえ逃さなければ、快く入社を決めてくれるでしょう。逆に「ゆっくりと考えて決めてください」と一歩引きさがると、「自分は必要とされてない」と感じ、熱意が冷める可能性があります。

④柔軟型
タイプ詳細:「少ししか情報を集めないが、色々と考えてすぐに決めない」タイプです。このタイプはネットの噂や口コミなどに惑わされやすく、意味のない疑心暗鬼に陥ることも多いです。
アプローチ方法:先回りしてネガティブな情報も伝えるのがコツです。たとえば「ネットではうちのことを悪く言う人もいるけど、実際は違うよ、本当はこうだからね」と疑心暗鬼の芽を潰しておきましょう。勿論、ネガティブな情報に対して、隠すような嘘をつくのではなく、きちんとした事実情報を伝えましょう。

意思決定スタイルの判別方法は「〇〇さんは内定が3社とか複数出たら、最後は何で決めようと思う?割とスパッと決められそう??」と投げかけ、判別していく形式や過去のエピソードから類推することがおすすめです。

ポイント3:意思決定を後押しする個別最適アプローチ

フォローの方針が固まれば後は本人の心理を読みながらアプローチしていきましょう。具体的には以下4つの試みが効果的です。

1対1で候補者にアプローチ

面談や電話など、本人に直接働きかける方法が基本です。これまで整理してきた情報をまとめたフォローカルテを活用し、対話を進めるとスムーズです。候補者から収集すべき情報の全体像と優先順位を整理したシートを以下からダウンロード可能です。ぜひご活用ください

候補者の周辺人物へアプローチ

入社の意思決定は、候補者本人だけでなく、家族・恩師・友人・恋人など周囲の影響も大きく受けます。意思決定が進まない場合は、「誰が影響力を持つのか」「その人は何を重視するのか」を事前に把握しておくことが不可欠です。
たとえば候補者が「誰と働くか(職場型)」を重視していても、両親が「休みは確保できるか(生活型)」を重視していれば、反対にあう可能性があります。懸念の多くは「企業としての安定性」に関するものです。その際は、財務の安定性、業界シェア、沿革、第三者の評価(各種ランキング)、報酬・給与レンジ、休暇取得率、福利厚生などを、新聞・雑誌・書籍・Web等の社会的な証明となるような情報を示し、候補者を介して影響者に届けるのが有効です。それでも不十分な場合は、社長・経営陣から親御様宛てに覚悟を伝える書簡(例:「●●さんを当社でお預かりします」)を送付する他、「父母説明会」「親子工場見学」等を企画し、直接理解を促す機会を設けましょう。

最終面接合格グループへアプローチ

最終面接に合格しても、すぐに承諾する人もいれば、判断に時間を要する人もいます。そこで有効的なのが、承諾者と未承諾者を一同に集めるイベントや懇親会の実施です。未承諾者への後押しは採用担当者の働きかけだけでなく、承諾者の等身大の話もプラスに働きます。承諾者は企業へのポジティブな印象を持っており入社動機も明確なため、志望理由や入社後の目標などを言語化できます。未承諾者はそれを聞くことで不安が解消され、自分と重なる内定者との共通点に気づき、入社意欲が高まりやすくなるのです。その際のポイントは、相性の良い組み合わせでグループを編成し、進行することです。未承諾者が明らかに合わない同期に出会うと、「ああいう人と同期になるのであれば、この会社はやめておこう」と感じる恐れがあります。逆に、事前に価値観やバックグラウンドの近い仲間と同席できれば、共通点から親和性が生まれ、自然な後押しにつながります。

採用進捗管理(ヨミ会)の徹底

フォローのヨミ会とは、最終選考に進む候補者に対して承諾確度(ヨミ)を見立て、フォローの優先度・フォロー実施日・次の打ち手を決める定例会です。たとえば、企業側の採用意欲が高く×候補者の意向度も高い場合は、様子を見ても問題ない一方で、企業側の採用意欲が高く × 候補者の意向度が低い場合は辞退リスクがあるため、早期に志望度を高める施策を優先する必要があります。このようにフォローのヨミ会を通して候補者を一覧化し、 「誰が・いつ・何をするか」 を明確にすることで、フォローが具体化し、抜け漏れを防ぐことが可能です。フォローのヨミ会を実施する際の候補者情報を整理するテンプレートもご用意していますので、ぜひご利用ください。

内定辞退率を下げる上で知っておくべき心理学的知見

人の意思決定と心理的なメカニズムは、切っても切り離せない関係にあります。以下では、採用プロセスにおける候補者の心理を理解し、内定辞退を下げるために有効な心理学の知見をいくつかご紹介します。

単純接触効果(何度も会うと好意を抱きやすくなる)

本文中で何度かご紹介しましたが、単純接触効果とは、人は繰り返し接触する対象に対して、次第に親近感や好意を抱きやすくなるという心理効果です。強い印象がなくても、接触回数が増えることで「よく知っている」「安心できる」という感覚が生まれます。したがって選考中から社員との接点が多いほど、候補者の不安は軽減されやすくなります。一度の強い訴求に頼るのではなく、候補者の負担にならない形で接触機会を継続的に設けることが重要です。

類似性効果(似ている人に好意を抱く)

類似性効果とは、人は自分と似た特徴や価値観、経歴を持つ相手に対して、好意を抱きやすくなるという心理効果です。候補者が「この会社の人は自分に近い存在だ」と感じられるほど、心理的距離は縮まりやすくなります。類似性効果を活かすには、候補者とバックグラウンドやキャリア観、性格が近い社員をフォロー面談に配置し、社員自身の価値観や大切にしている考え方を率直に共有してもらう施策が効果的です。

返報性の原理(好意はお返ししたくなる)

返報性の原理(好意の返報性)とは、人は好意を受け取ると、その期待に応えたいと感じやすくなるという心理効果です。そのため、採用に関わる社員が候補者一人ひとりに丁寧に向き合うことで、候補者は「大切に扱われている」「自分のために時間を使ってくれている」と感じやすくなります。その結果、候補者は企業に対して自然と前向きな感情を持ちやすくなり、内定承諾に向けたフォローの効果を高めることにつながります。

一貫性の原理(ぶれたくない思い)

一貫性の原理とは、人は「自分がこれまで表明してきた考えや行動と、一貫した選択を取りたい」と感じる心理的傾向を指します。採用の場面では、候補者が面接の中で語った価値観や志向性と、内定承諾という意思決定が自然につながるように示すことが重要です。たとえば、「成長機会を重視している」「裁量を持って仕事をしたい」といった発言があれば、それをそのままオファー理由やフォローの中で言語化し、「だからこそ、〇〇さんに弊社の環境は合っている」と一貫性を示すようにしましょう。

認知的不協和理論(矛盾に対して自己説得)

認知的不協和理論とは、自分が抱いている認知と、それとは矛盾する別の認知を同時に意識した際に生じる心理的な不快感(モヤモヤ)を指します。そして人はこの不快感を避けるため、無意識のうちに認識や行動を調整し、自分の選択や考えに一貫性を持たせようとします。

たとえば、「ワークライフバランスを重視し、残業の少ない環境で働きたい」と考えている候補者が、選考中の企業について「残業時間が多い」という口コミを目にした場合、「残業を避けたい自分」と「残業が発生し得る企業を志望している自分」の間に矛盾が生じ、認知的不協和が生まれます。ただし、この矛盾は必ずしも選考辞退につながるわけではなく、候補者も「年間で見れば残業は多くないのではないか」「繁忙期があるのは一般的だ」といった形で情報を捉え直し、「この選考に進んでいる自分」をなんとか正当化しようとします。

もし候補者がこのような矛盾(懸念)を抱えていると察知した場合、企業側は事実に基づいたデータ(実際の残業時間など)を示すと同時に、不協和を解消するための「新しい認知(プラスの意味付け)」を提供しましょう。「確かに繁忙期は残業が発生しますが、その分〇〇のスキルが圧倒的なスピードで身につきます」「フレックス制度を使って、閑散期には長期休暇を取る社員が多いです」といった情報を示すことで、候補者は企業の実態を正しく理解し、納得感を持って判断しやすくなります。

フレーミング効果(同じ内容でも、見せ方で印象が変わる)

フレーミング効果とは、同じ情報であっても、その提示の仕方によって人の意思決定が大きく左右されるという心理効果です。例えば医療現場において、新薬について「完治率90%」と説明する場合と「未完治10%」と説明する場合では、示している事実は同じであるにもかかわらず、前者では効果の高さが強調され好意的に受け取られやすく、後者ではリスクが強調され否定的な印象を持たれやすくなります。 これを、残業時間の多さを懸念する候補者のケースに当てはめると、 「忙しい時期は残業が発生することがあります」 と伝えるのと、「繁忙期はありますが、年間平均では月○時間程度に収まっています」 と伝えるのとでは、伝えている事実は近いものの、受け取られ方は異なります。この場合後者の方が不安を過度に増幅させにくい伝え方だと捉えられます。 採用のフォローにおいて重要なのは、不利な情報を隠すことではなく、候補者の意思決定軸に沿って、どのような情報の伝え方だと納得感があるのかを考え、候補者によって使い分けを行うことです。

興味加減の法則(追えば逃げる引けば来る)

興味加減の法則とは、相手への関心の度合いが小さい方が主導権を握り、強い交渉力を持つという心理的傾向です。いわゆる「追えば逃げる、引けば来る」です。候補者の意思決定スタイルが「決断型」であれば、適度に背中を押すアプローチが有効な場面もあります。とはいえ全員が決断型ではないため、特に入社してほしい候補者ほど、押し過ぎていないかを定期的に見直し、アプローチの量・温度・タイミングを調整しましょう。

適合感を伝える(PO Fitの訴求)

PO Fit(Person–Organization Fit/個人‐組織適合)とは、個人の価値観・働き方の志向・行動様式と、組織の価値観・文化(意思決定の進め方、評価のものさし、称賛される行動、暗黙のルールなど)がどれだけ噛み合うかを指します。研究では、PO Fitが高いと満足・組織への愛着が高まり、離職したい気持ちが低くなることが確認されており、PO Fitは入社後のミスマッチ防止に直結するとも言えます。そのため内定前の段階から、候補者が重視する価値観や働き方と自社文化の合致点を具体事例で示し、入社後のミスマッチの不安を和らげましょう。逆にPO Fitが低いと判断されると「入社後に浮くのでは」「評価されないのでは」といった懸念が強まり、承諾が遅れる/他社に流れる可能性が高まります。

玉ねぎモデルを活用した自己開示

玉ねぎモデルとは、自己開示を段階的に進めることの重要性をたとえたものです。玉ねぎの皮を一枚ずつむくように、浅い情報から少しずつ深い情報へと進めることで、相手との距離が自然に縮まります。自己開示は相互のバランスが肝心で、開示レベルが釣り合わないと相手の好意や会話の心地よさが低下しかねません。採用場面では、まず話しやすい趣味や特技などから入り、徐々に感情や価値観の話題へ、必要に応じて過去の困難や悩みといった深いテーマへと広げていくようにしましょう。

内定辞退率の抑制に向けてまずは現状把握を

これまで内定辞退の抑止に向けた取り組みをご紹介してきましたが、まずは自社の内定辞退率が高いのか低いのか、何に手を打つべきかを見極めるために、現状の振り返りが欠かせません。振り返りは、日常的に異常値の有無を確認するモニタリングと、採用終了後に実施する多角的な分析の双方を行いましょう。最後に現状把握の進め方をご紹介します。

内定辞退率のモニタリングと予兆検知

採用終了後に数値を確認しても、手遅れで打ち手が残っていない場合があります。そこで、候補者の状況を整理する管理表を用意し、内定辞退率が過度に高くないかを週次でモニタリングしましょう。就職活動の初期は、学生が複数社を並行受検し複数内定を保持しやすいため辞退率は上がりがちで、後半になるほど内定承諾率は高まります。したがって、常に時期の特性を踏まえて数値を点検し、「今のタイミングでこの水準は妥当か/追加で打つべき手はないか」を見直すことが重要です。

定量的/定性的データを元に振り返る

採用終了後はデータが出そろうため、まず前年実績や市場平均と歩留まりを比較し、何が良かったか・どこを改善すべきかを把握します。さらにおすすめなのが、辞退者へのヒアリングです。選考途中辞退・内定辞退者は、何かしらアンマッチな要素を感じて辞退に至っています。その理由をインタビューやアンケートで収集・整理しましょう。しかしながら、学生の本音を引き出して辞退理由を探り、分析を通して示唆を出すことは時間や工数もかかり、難易度が高いのが実情です。

弊社では両データに基づく振り返りサービス「採用力診断」をご提供しています。内定辞退率の高さに課題を感じている方、振り返りの工数確保が難しい方、深く分析した情報を元に次年度の戦略を考えたいという方はぜひご検討ください。

出典

※1 株式会社インディードリクルートパートナーズ 就職みらい研究所「就職プロセス調査(2025年卒)「2025年3月度(卒業時点)内定状況」」

https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2025/03/naitei_25s-20250325.pdf

※2 株式会社インディードリクルートパートナーズ 就職みらい研究所「就職白書2025」

https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/hakusho2025_data.pdf

※2 株式会社インディードリクルートパートナーズ 就職みらい研究所 「就職白書2024」

https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2024/02/hakusho2024_data.pdf

※3 エン・ジャパン株式会社「中途採用の選考辞退 実態調査」

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2024/38339.html

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