新着情報・ブログ

「おわり」は「はじまり」 〜終わらせる勇気〜

「おわり」は「はじまり」 〜終わらせる勇気〜

日本が勝ち目の無い戦に何故進んでいったのか・・・という先の戦争についての議論で、日本人は「終わらせること」が難しいからという説を聞いたことがある。

あれだけ血を流して勝ち取った領土を手放してたまるか、犠牲になった人々に申し訳が立たない、と言う気持ちの下に、どんどん人や物資を投入して行き、挙句の果てにはご存知の通りのカタルシスになった。

日本人はこのように、一度決めたことを覆したり、投資してきたものから身を引いたりすることが苦手。そういう説。

確かに、「できるまでやればできる」とか「ならぬはひとのなさぬなりけり」とか「諦めるな」「頑張ればいつかはなんとかなる」というメッセージを持つ日本の格言は多い気がする。

この手の説(日本人論)は、「過度の一般化」であることが多く、これもそうだとは思うのだが、実地では結構使える面白い素人理論だと思った。

例えば、転職などもそういう感じかもしれない。

自分がこの会社に投資してきた歳月や労力を思って、そこから飛び出すことができない人は多い。そうしているうちに、飛び出すことができなくなって、結局リストラされたり、閑職に追いやられたりする。

僕もそういう気持ちは少しはわかる気がする。僕は前職のリクルートのことはかなり愛しているつもりだし、(たかだか15年ぐらいだが)社会人としての労力のほとんどをリクルートという組織を個を活かす理想の組織に変えていくことに費やしてきた。

その、自分の人生を投資をしてきたリクルートで、自分は負け戦になるなと感じた際に、辞めるという決意はなかなかできなかった。(でも結局辞めてるし、自分は身を引くのは得意なのかもしれませんけども・・・でも辞めたから、今の会社で楽しく仕事ができている)

離婚とかもそうか。

パートナーとの蜜月の思い出、結婚式などの周囲を巻き込んで大変な労力を使って行ったイベント、二人で集めた家具や道具、新しい家族・・・等々が足かせになって、二人の仲がどんなに冷え切っていても、その関係を解消することには多大な労力と勇気が必要。

事業をやめたり、組織を壊したりするのも同じ力学が働く。

一度始めた事業や、一度作った組織は慣性を持ち、ずっと存在し続けようとする性質がある。その一つの理由は所属する人々が愛情(非合理な愛情)を事業や組織に持ってしまい、足かせとなることである。

しかし、仕事でも、結婚でも、事業でも、組織でも、本当にダメなのであれば、できるだけ早く辞めてしまって、次のステージで頑張ることの方がよい場合はままある。そのほうが傷が浅い場合が多い。

昔、採用をお手伝いしたこともある某大企業。多大な借金を抱え、ビジネスモデルは古く、競合も多い。ただ、いわゆる「大きすぎて潰せない」会社であったという理由で、税金をつぎ込んだりして、無理やり残って今に至る。

しかし、他の元気な競合会社の中に取り囲まれて、完全に生気を失ってしまっているように思う。いい話は一つも聞かない。その時のお客様も、とっくの昔にその泥舟から飛び出し、別の元気な会社で大活躍されている。先日飲む機会があったが、大変生き生きしていた。

本来ならその企業はつぶれた方が良かったのかもしれない。事業がうまくいっていないのは、要は世の中からそんなに求められていないということ。だのに、それを無理やり残したことによって、今、そこで働いている方々の可能性は最大化されているのだろうか、使った税金は最大の効力を発揮しているのだろうか・・・疑問に思う。

むちゃくちゃになってしまったら、一旦ゼロクリアをして、新しいところから再スタートする方がよいと、僕は思う。

そういう思想は、「根性が無い」とか「飽き性」だとか言われがち。自分も言われた気がする。確かに、今よりも変化のスピードが遅かった昔は、芽が出るまで辛抱強く頑張り続けることで勝てることも多かったのだろう。

しかし、変化の激しい今の世の中では「だめだったら次」という試行錯誤の思想の方がうまくいく時代なのではないだろうか。朝礼暮改ならぬ朝礼朝改という言葉もある。試行錯誤の回転を速くして、打席に立つ回数を増やしていくことで、ヒットの絶対数を増やす。

結婚をしたいと考えている適齢期の女性によくするアドバイスとして似たようなことを言ったことがある。「とりあえず機会があったら行ってみる。だめだと思ったら、すぐ次」

しかし、これには高いハードルがあるのですよね・・・

要は、「別れる力」が無い人には、それができないのである。出会い頭でも何でも、ベストでなくったって、偶然出あったその機会に感情移入してしまって、だめだと思っていても別れることができない。

「別れる力」が無い人は、結局、慎重にいろいろな選択肢を見定めて、じっくり考えて、これだ!と確信できる場合にのみ進んで取る、というアプローチしかできない。

どうしたら、「別れる力」ができるのかはよくわからない(今度、じっくり考えてみたい)。今の僕には「勇気を持て」ぐらいしか言えることがない。背中を押してあげることしかできない。

新卒採用時代、内定者に配属面談をすると結構な数の人が「彼女(彼)がいるので地元に残りたい」と言った。その時よく言ったのは、「事実から言うと、学生時代の恋人とは9割は別れるので、そんなことで自分の未来を縛るのはやめとき」「新しいステージに入ったら、パートナーを選ぶ目も変わるし、出会える人も多く、かつ変わっていくよ」ということ。これも、同じような考えから言ったことだった。

勇気を持って、愛してきたものと別れなければ、新しいステージがやってこないこともある。

と言うわけで、僕は今日も、いろいろな人に「別れろ」と告げている。人は僕を「別れ推奨派」と呼んだりします・・・

PAGE TOP